高校2年
第四十八話 理不尽さから
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ろうが!)
宮園は内心で悪態をつく。
宮園には分かっていた。飾磨ら足が遅い連中にとっては、全力で走ったって1分5は切れるタイムではない。そして、1番チャンスがあったのは、まだ疲労も溜まっていない最初の一本。最初の一本でギリギリダメだったのが、これから何本もやり直しをしていく中で、余計に遅くなる事はあっても速くなる事なんてないだろう。
要するに、無理なのだ。
「5、4、3、2、1、スタート!」
マネージャーの京子の号令が無情に響く。
まだ心なしか息が上がったままの選手は再び走り出す。
「1分!1、2、3、4、5、6……」
先ほどの一本と、全員のタイムは殆ど変わらなかった。つまり、また全員1分5以内には帰ってこれなかった。
もう一本。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
「頑張れよ!いける!いけるけん!」
早くも諦めの表情が見え始める飾磨ら鈍足の選手に、渡辺は健気に声をかけ続ける。こういう部分は、やはり主将としての自覚がある。
「5、6、7、8……」
しかし、渡辺の声かけも虚しく、三回目のチャレンジもまた失敗に終わる。当たり前である。言葉で足など速くならないのだ。むしろ、本数がかさんできた分だけ遅くなる。
「……チッ……何で余計に遅くなるんちゃ……」
三本全てタイムに入ったのにも関わらず、4本目が決定した美濃部が苛ついた顔で悪態をついた。この一言に、チームの空気は一層険悪になる。
「バカかお前!んな事言うとってどもこもならんやろが!文句言うててもしゃあないやろ!」
渡辺が美濃部を咎めるが、この雰囲気はどうしようもない。口に出さないだけで、タイム以内で走り切っている者は誰でも思ってる事だ。
そしてまた、鈍足の選手の表情が暗くなる。
(……何とかしないと、本当に終わらないな……)
翼は両膝に手をついて息を整えながら考えていた。このまま走り続けるのも嫌だし、かといって美濃部のように文句を言った所で状況は改善されない。一体どうすれば良いのか?
(……待てよ……確かこれと同じ状況……)
翼の脳裏をよぎったのは、1年生の春の走り込みだった。その時も、タイムに入らないともう一本というペナルティが課されていた。そしてその時翼は……
(……わざとゆっくり走って、飾磨と一緒にペナルティの一本を走ってやったんだよな)
そしてその事を、浅海に咎められた気がする。
“それに、お前、遅いヤツに合わせて一緒に走ってあげようなんて、弱いヤツが可哀想だからみんなで弱くなってあげようなんて言う最近の悪しき教育と同じじゃないか……”
浅海はその時にはそう言った。
(一緒に弱くなるのもダメ、放っておくのもダメ、か。……一緒に強くなるしかないんだな)
翼の頭の中に
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