第一部
第零章 プロローグ
消失-ヴァニッシュ-
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この話だと、どうやら尾白以外にも友人がいるようだ。
「花、か。ちょうどいいな」
「え?」
「なんでもない。それより、どこの花壇だ?」
「ああ、観覧車のすぐ近くんとこ」
「わかった」
憐と呼ばれた人物がどこにいるのかわかるや否や、彼はせっせとその場を去って行った。
「もうちっと話をしようとか思わねえの?憐と孤門もよく向き合えるよな…」
嫌な奴とまでは言わないけど…そう付け加えて尾白は去って行った彼に呆れたように呟いた。
シュウは無口かつ無表情が強く押し出されているかのように、笑みというものをこれまで他人に見せたことがなかった。そのせいかまるで彼の顔そのものが鉄仮面のようで、彼の端正な顔を目的に声をかける女性もいたが、彼の無表情さと無関心さ故にすぐ飽きてしまい今はほとんどいない。道行く人が、心なしか彼を避けて歩いているのが見受けられる。それを気にも留めずシュウは歩いていく。
ようやく観覧車前までたどり着くと、シュウと比べると少しだけ小柄の茶髪の、いかにも人懐っこそうな青年が花壇の手入れをしていた。
「憐」
名前を呼ばれた青年は、手入れを中断し立ち上がって後ろを振り返る。
「お、シュウ!今日も来たんだな!」
肩をパンパン叩いてくる彼の名は『千樹憐』。シュウや尾白とは同じ18歳の青年だが、学校にも就職もしていない。だがここに来る子供たちの笑顔を見たいらしく、ここでアルバイトをし続けている。
「ああ。だが今日はついでで顔を見に来た」
「ついで?何をしに来たんだ?」
首を傾げる憐。
「花をくれ。切り花にちょうどいいのはないか?」
「花?誰か、見舞いにでも行くのか?」
「いや、…墓に供えるためのものだ」
少し答えにくそうにしながらも、シュウは鼻を必要とする理由を伝えると、また憐は首を傾げる。
「墓?」
「何かないか?」
「そうだな…切り花と供え物にちょうどいいやつって…遊園地にそんなのあるかな?」
遊園地は娯楽施設。人の心に安らぎを与えたり弾ませたりする目的もあって、花はチューリップやパンジーが多い。とても墓に供えるのに向いている花があるとは思い難い。
「あ、そうだ!近くに花屋があるんだ!そこに案内するよ」
「…助かる」
憐に連れられ、シュウは彼と共に花屋へ歩き出した。
「瑞生、どうしてるか聞いている?」
花屋へ向かう途中、憐がシュウに誰かのモノと思われる名前を口に出して尋ねてきた。
「瑞生?どうしてだ?」
「いや、お前と瑞生ってTLTの同僚だろ?それにほら、MPってビーストを見た人たちの記憶の消去が目的だったじゃん。それをしなくなった今、仕事がさ…」
瑞生は憐とは同世代のMPの少女。憐とは交際している仲だ。MPの役目がほぼ終わったともいえる今、彼女が今どうしているか気
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