第一部
第零章 プロローグ
消失-ヴァニッシュ-
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なってさらに成長が見受けられる。入隊してからこれまでの戦いを乗り越えてきたおかげだろう。
凪も憎しみを克服してより冷静さを保てるようになり、『黒崎』への指導も抜かりない。
詩織も元々優れていた銃器の扱いもうまくなり、『石掘』の時のショックから立ち直ったとも見える。だが…)
青年の去ったコマンドルームの入り口を、和倉はじっと見る。すると、今度は黒い髪に白いメッシュのある男性がコマンドルームを訪ねてきた。
「失礼します」
「あなたは…海本博士、どうしてこちらへ?」
和倉が、訪れる人としては思わぬ人物だったためか目を丸くする。
「休暇をとれたので、今日は彼の様子をこの目で見に来たのです。突然の訪問をお許しください」
海本は謝罪を入れ、頭を下げる。ナイトレイダーにとって海本は階級が上の存在、急な訪問と謝罪に戸惑いながらも、座り込んでいた凪・詩織・孤門は立ち上がって海本に向けて敬礼する。それに応え、海本も頭を下げる。
「彼は、このチームでうまくやっているでしょうか?」
この海本という男性は、本名は『海本隼人』。北米本部で勤務している研究者である。TLTが所持する兵器の多くは、『来訪者』と呼ばれる宇宙生命体から与えられた知識を借りたもので、海本は彼らと人類を繋ぐ者の一人だ。しかしそれを仕事とする立場は決して楽なものではなく毎日が多忙だ。そんな彼が北米からわざわざ日本へやってきたことには理由があった。
和倉は海本からの質問に対してこう答えた。
「ええ、任務を忠実にこなし、我が部隊には理想的な人材と言えます。ただ…」
「ただ…何か、問題が?」
「時々自分の身を削りすぎるところが見受けられます。必要以上に訓練場にこもり、任務の際人質に取られた被害者を救出するために一人で飛び出すなど…」
「…そうですか」
海本はどこか沈んだ声で呟く。すると、今度は初老で細身の男性がコマンドルームを訪問してきた。
「海本博士。立場上あまり一人で出歩いては困るのですが」
「松永管理官」
失礼したと海本は、松永と呼んだ男に頭を下げた。
松永要一郎。TLT日本支部の管理官を務めている。ビーストから人類を守るためならば自らの手と心を汚すことをいとわない覚悟を秘めた人物である。時折冷酷な手段さえも使うことがあるが、TLTの人間は彼のことを嫌悪するほどには思っていない。
「R7性因子。彼は他の隊員たちよりもそれがずば抜けて高かった。それ故、新たなナイトレイダーチーム編成のために我々TLTは彼が必要だったのです」
ビーストが放つ振動波は、実は人類にとって精神的に有害な波動。R7因子とはそれに対する抗体のようなもの。ナイトレイダーたちは一般人と比べてそれが高いためにビーストと戦うだけの肉体を手に入れることができた。あの青年も例外ではない。
「ですが
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