第四章
[8]前話
第四章
「はあ!?ふざけるな!」
「また言ったのか!」
「オーナーの犬が!」
「太鼓持ちだ!」
こうしてブログには怒りの書き込みが殺到した。
そして事務所にもさらに抗議が来てであった。
遂に事務所を解雇された。落語界からも永久追放になってしまった。
それを見てだ。村野はまた言った。
「この通りや」
「本当に終わりましたね」
「事務所もクビになりましたし」
「落語界からも」
「当然の結末や」
村野は冷めた声であった。
「これもな」
「当然ですか」
「ああなったのは」
「言うたやろ。ああいう奴は自滅するんや」
そうなるというのである。
「それでや」
「何かね、たかが選手っていうのはね」
「あんまりですよね」
「ですよね。オーナーも酷いですが」
「それに便乗したあいつも」
「所詮はや」
村野はだ。ここでこう言ってみせたのだった。
「たかが芸人や」
「たかが、ですね」
「あいつも」
「人間誰しもたかがなんや。それをあのチームのファンで芸人っていうだけでや」
「あそこまで威張って」
「それでなんですね」
周りもこれでわかったのだった。
「破滅ですか」
「そうなるってことですか」
「そういうこっちゃ。自分が招いたことや」
眼鏡の奥の目がここで光った。
「ああなるしかなかったんや」
「そういうことなんですね」
「成程」
そしてだ。麦助はだ。
公園の端でだ。子供達に言われていた。
「あっ、麦助だ」
「馬鹿だ」
「うん、アホがいるよ」
「うるせえ、ガキ共」
みすぼらしい姿で子供達に言い返す。
「俺はな、野球と落語にかけてはな」
「お母さんが言ってたぞ」
「御前は最低の人間だってな」
「そんな奴はここにいるな」
こう言ってだ。石を投げるのだった。
「汚い奴は何処かに行けよ」
「そうだよ、たかが芸人だろ?」
「もう芸人じゃないけれどな」
「くっ、こいつ等・・・・・・」
怒りのあまり子供達を殴ろうとする。しかしだ。
その尻をだった。子供達が連れている犬に噛まれたのだった。
「痛っ!この馬鹿犬」
「よし、メリーやっちまえ」
「容赦するんじゃないぞ」
犬に追いたてられてだ。ほうほうのていで逃げ出すのだった。
そして末路は誰も知らない。あの人は今、といった番組でも話に出されることはなくだ。ただ一人の愚か者がいたことだけが語られるのだった。たかが芸人として。
たかが芸人 完
2010・9・29
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ