第七十四話 冬化粧その十二
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その熱いお茶を飲んでからだ、母にこうも言った。
「じゃあ今日は」
「これでよね」
「そう、寝るわ」
言うのはこのことだった。
「ちょっと早いけれどね」
「することないからなのね」
「疲れたし」
またかえって、と言うのだった。
「だからね」
「じゃあまた明日ね」
「ええ、朝起きたら学校に行けたらいいわね」
「明日になればバスも電車も動くから」
交通手段が復活するというのだ。
「安心してね」
「期待してるわ」
母とこう話してだった、琴乃はこの日はすぐに寝た。酒と風呂で身体も適度に疲れていたのかすぐに気持ち良い眠りに入ることが出来た。
そして朝になってだ、リビングに行くと。
父はいない、それでキッチンにいる母親に尋ねると。
「もう会社に行ったわよ」
「あっ、じゃあ」
「電車もバスもね」
「動くのね」
「ええ、だからね」
「私も学校行けるわね」
琴乃は顔を明るくさせて言った。
「というかお外に出られるのね」
「ええ、そうよ」
「やっとね」
しみじみとした口調になっていた。
「いや、昨日みたいな日はもう沢山よ」
「本当に嫌だったのね」
「動けないのが嫌なのよ」
またこう言うのだった。
「それでなのよ」
「あんた本当に動くのが好きなのね」
「活動的っていうのかしら」
「そうね、そう思うわ」
自分でもだというのだ。
「「それじゃあね」
「今からなのね」
「御飯食べて歯を磨いてね」
そうしてというのだ。
「あとお顔も洗って髪の毛も整えて」
「あんた今髪の毛結構ぼさぼさよ」
「そんなに?」
「どういう寝方したのよ」
娘の方に振り向いてくすりと笑ってだ、母はこう言ったのである。
「一体」
「いや、普通に寝ただけだけれど」
「それでそんなにひどくなるの?」
「というか今の私の髪そんなに酷い?」
「だからぼさぼさよ」
そうなっているというのだ。
「物凄い感じよ」
「ううん、そういえば昨日」
母に言われて思い出した、昨日自分が何をしたのか。
「お風呂で髪の毛洗ったけれど」
「ちゃんと洗ったのね」
「コンディショナーし忘れたわ」
「それでかしらね」
「リンスはしたけれど」
言うまでもなくシャンプーもだ。
「コンディショナーはしなかったわ」
「あんたの髪って結構デリケートだからね」
「そうなのよね。それで」
「じゃあね、ちょっと洗う?」
「朝シャン?」
「それする?」
「ううん、別にいいわ」
そこまではというのだ。
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