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万華鏡
第七十四話 冬化粧その十一

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「スキーでもできたら別だけれどね」
「あっ、スキーね」
「スポーツが出来るなら別だけれど」
「お母さんスキー得意なの」
「得意じゃないけれど好きよ」
 遊ぶことはというのだ。
「それはね」
「そうなのね、私もね」
 琴乃にしてもだった、スキーはだ。
「あれは好きね」
「怪我が怖いけれどね」
「ええ、それでも楽しいわよね」
「そうしたので身体を動かせるのならいいけれど」
「そうじゃないと」
「ええ、お母さんにも雪国暮らしは難しいわ」
 この辺り琴乃と同じだった、やはり母娘なので同じ傾向があった。むしろ琴乃がこの母に似たと言うべきであろう。
「一日でこうだからね」
「うん、雪って案外嫌ね」
「雨は降ったら終わりだけれど」
「雪は残るからね」
「多分暫く残るわよ」
 街に雪がというのだ。
「そうなるわよ」
「でしょうね、寒いし」
「大雪ならそれだけね」
 雪の量が多いだけに、というのだ。
「雪が残るから」
「暫く雪を見続けるのね」
「そうなるわ、そこは覚悟してね」
「雪はちょっとならいいけれどね」
「ここまで積もるとね」
「もういいわってなるわ」
 雪合戦どころではない、雪崩だの何だののリスクも出て来るからだ。
「今日そのことがよくわかったわ」
「本当にそうね、お母さんもよ」
「明日は学校に行ってね」
 それでだとだ、琴乃は今度は明日のことを話した。
「楽しくやりたいわ」
「学校が一番楽しいっていうのね」
「うん、部活も調子がいいし」
「ライブの予定もあるから」
「節分ライブね、成功させないとね」
「やるからにはね」
「そう、何としてもね」
 琴乃jは目を輝かせて母に答えた。もう酒はすっかり抜けていて顔の色も赤から白に戻っている。
「成功させないとね」
「その意気よ、けれどね」
「けれど?」
「力は入れ過ぎないことよ」
「かえって変な力が入ってよね」
「失敗するからね」
 だからだというのだ。
「適度に力を抜いてね」
「そうしてやっていくのね」
「緩急は必要よ」
 音楽には、というのだ。
「それと一緒に適度に柔らかくね」
「そうでないといけないのね」
「そうよ、ガチガチだと動けないから」
 だから失敗するのだ、あまりにも硬くなっているとだ。つまり力を入れ過ぎているとそうなってしまうというのだ。
「適度によ」
「力を抜いてリラックスして」
「さもないと楽器演奏出来ないわよね」
「歌も歌えないわ」
「だったらね」
 こう話すのだった、娘に。
「いいわね」
「わかったわ、それじゃあね」
「そういうことでね。適度にリラックスしてね」
「ええ、わかったわ」
 琴乃は母の言葉に頷いた、そしてだった。
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