これこそ、私の待ち望んでいた切り札です!
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彼女はポケットからビー玉のようなものを取り出し、それを頭上に掲げた。
「さあ、出ておいで! ワルドリー!」
まるでことりの言葉に応えるかのように玉は眩い光を放ち、みるみる内に巨大化していく。
光が治まった時、そこにいたのは人間よりも遥かに大きい鳥の姿をした怪物だった。
「ごめんね。真姫ちゃんに恨みはないんだけど、不安の芽は早めに摘み取っちゃわないといけないから……行きなさい、ワルドリー!」
ことりがワルドリーと呼ぶ怪物は耳を劈くような甲高い鳴き声を上げて、真姫に向かって突進してくる。そのクチバシは工事現場に置いてあるコーンと同じくらいの大きさであり、それが人間の体に直撃でもしようものなら、大怪我などという言葉で済まされるはずがないことは容易に想像がついた。
しかし、真姫は自身の命に危険が迫っているにも拘わらずその場から一歩も動けなかった。
ワルドリーが見た目よりも速く動いていることもあるし、恐怖で体が思い通りに反応できないこともある。だが、真姫の動きを鈍らせた一番の理由は、彼女の背後で眠らされている三人だった。たとえ真姫が何とかワルドリーの攻撃を回避したとしても、その代わりに眠っている彼女らが犠牲になる。その事実が頭を過った瞬間、彼女の体が回避行動を拒絶したのである。
「真姫ちゃんをイジめちゃだめえええええっ!」
ワルドリーのクチバシが真姫の体に突き刺さる寸前、女の子の叫び声と共に小さな光の玉が飛来し、怪物の巨体を吹き飛ばした。
「ふぅ……危ないところだったね、真姫ちゃん」
「え……は、花陽!?」
真姫の危機を救った光の正体は、同級生の小泉花陽だった。しかし、その大きさは二十センチほどしかなく、涼しげな白いワンピースを身に纏い、背中に二対の羽根まで生やしている。その姿はまるでおとぎ話に登場する妖精さながらであった。
「ち、違うよ! 私はカヨチン。故郷のライスランドを悪の組織ルサムーラから取り戻すためにこの世界へやって来た妖精だよ!」
「悪の組織? 妖精? ちょっと、何言ってるのかよく分からないんだけど……」
「ルサムーラは大魔王オヤドリーを復活させてこの人間界を支配しようと企んでいて、それを阻止できるのは、伝説の戦士しかいないの!」
「伝説の戦士……もしかして、それって……」
「お願い、真姫ちゃん! 伝説の戦士になってライスランドを、この世界を守って! あなたには、その素質があるんだから!」
そう言ってカヨチンと名乗る妖精が手を翳すと、真姫の手元にコンパクトミラーが現れた。
「さあ、唱えて! 『真姫ちゃん可愛い、カキクケコ』!」
「な、何よその恥ずかしい呪文は!」
「いいから唱えて! 世界がどうなってもいいの?」
「わ、分かったわよ! 『真姫ちゃん可愛
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