これこそ、私の待ち望んでいた切り札です!
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のはこの『格納庫』の中央に横たわる物である。
端的にそれを表すならば、金属製の巨人だった。二十メートルほどある鈍色の巨体が、まるで王子のキスを待つ白雪姫の如く横になっていたのだ。
「あれって……あれよね。燃え上がったり蘇ったりする、モビルなスーツよね。何で音ノ木坂学院の地下にあんなものが……」
「時間がないわ。あれに乗って。敵を迎え撃つわよ」
「え!? の、乗るの? あれに? っていうか、迎え撃つってどういう――」
にこがそうやって疑問を投げ掛ける間も、絵里はにこの手を引いて鋼鉄の巨人へと足を進ませる。
二人が乗り込むことのできるコックピットは、人間で言うところの鳩尾に設けられていた。すぐにでも人が入れるように開け放たれており、たくさんの計器やモニターが並んでいるのが見える――それは誰しもが頭に思い描く典型的なロボットの操縦席だった。
梯子などを使って何とかコックピットに乗り込むと、自動的に入口が閉じられる。
「せ、狭いわね……」
「我慢して。元々一人乗りなんだから」
にこの文句を受け流しながら絵里は主電源を入れるボタンを押す。そのすぐ横にあるディスプレイに光が灯り、開発した組織のものらしきエンブレムがでかでかと表示される。その後、ロボットの視界と思われる映像が壁一面に映し出された。
「私にだって、動かすことくらい……!」
絵里がレバーやらフットペダルやらを操作すると、重厚な機械音と共に鋼鉄の巨人が立ち上がった。
「――第一話『にこにー大地に立つ』ってね」
にこが自らの作り上げた壮大なストーリーを語り終えた後、真姫が机を叩いて声を荒げた。
「長い! その上に重い! っていうか、何でいきなり私達が死ななきゃいけないわけ!?」
「演出よ。え・ん・しゅ・つ。身近な人間が犠牲になることで、主人公であるにこにーの戦いに対する意志を生み出すのよ」
「そういうことを言ってるんじゃないの!」
「なるほど。目の前で仲間の無惨な姿を見させることで、主人公の中に敵に対する憎しみや戦いに対するモチベーションを芽生えさせるということですね」
「海未もそこで感心しない! そもそも、何で主人公がにこで相棒役が絵里なのよ」
「何や真姫ちゃん、やきもち? にこっちの相棒役は譲れへんて?」
「そんなこと一言も言ってないでしょ! 希は冒頭で退場するモブ扱いで何とも思わないの?」
「甘いな、真姫ちゃん。ここで死んだと見せかけて、七話辺りで『実は生きてました』って敵側で登場するんやんか」
「流石は希ね。にこの考えてることがよく分かってるじゃない」
「何で通じ合ってるのよ! さては打ち合わせしてたわね!」
「読者に死んだと思わせておいて、後で敵役として再登場させる……と。参考になります」
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