これこそ、私の待ち望んでいた切り札です!
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分かっている。しかし、彼女らを残して自分だけここを立ち去るのは、仲間を見捨てて助かろうという酷く身勝手な行為に思えて仕方なかった。にこの胸中に渦巻くどうしようもない罪悪感が、彼女の足を動かなくしているのだ。
にこのそんな考えを知ってか知らずか、絵里は彼女の肩を優しく掴み、諭すように言った。
「気持ちは分かるわ――私だって、助けてあげられるならそうしたい。でも、私達は今生き残らなきゃいけないの。きっと、三人もそれを望んでいるはずよ」
自分にも言い聞かせるような絵里の口調に、にこははっと言葉を失う。
μ'sの仲間を喪うという苦しみは、にこだけでなく絵里にも――そして、他の四人にも――重くのしかかっているはずだ。それにも拘わらず、絵里は気丈に前を向いて生きるために戦っている。そんな彼女の気持ちを無視して、自分だけ楽になろうという独りよがり考えなど、できるわけがなかった。
「そうよね……ごめん、絵里」
「いいのよ。さあ、早く行きましょう」
どちらが促すわけでもなく手をしっかりと繋ぎ、二人は部室をあとにして走り出した。
「ねえ、絵里。私達、一体どこに逃げるつもりなの?」
「そうね……地下のシェルターはもう閉められているでしょうから、もう格納庫しか……」
「シェ、シェルター? 格納庫? 何の話をしてるのよ、絵里」
絵里の口から出てくる物騒な単語に恐怖を覚えながらも、彼女の指示に従って校舎内を進む。
未だ自らの周りで起こっている出来事も満足に把握できぬまま連れて来られたのは、講堂。全校集会やμ'sのライブなどで幾度となく訪れたこの場所は、他の校舎よりも頑丈に作られているためか普段と何も変わらない状態に見えた。
「こっちよ、にこ」
ここに隠れるのかとぼんやり室内を眺めていたにこを、絵里が手を引いて壇上へと促す。
彼女はポケットから鍵のようなものを取り出し、何時も生徒会長として演説やら報告やらを行っている卓へと突き刺す。すると、卓の上部がスライドするように開き、パソコンのものと思しきディスプレイと文字を入力するためのキーボードがあらわになる。
絵里が流れるような動作で数文字入力した次の瞬間、重厚な音と共に約三メートル四方の床がゆっくり沈み始めた。
数分もすると、床の下降が止まって卓の反対側の壁が開く。
「な、何なのよ……これ」
講堂の地下に相当する空間に広がっていたのは、現実離れした想像を絶する景色だった。
絵里が格納庫と呼ぶこの場所は東京ドームが丸々入りそうなほどの広さを有しており、何かを作ったり運んだりするための大きな機械があちこちで見られる。格納庫と言うよりも、ドックと言う表現の方が近いように思えた。
そんな施設が学校の地下にあることも十分驚くべきことだが、それよりも驚く
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