心を開いて、妹さん その二
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山田先生の話を聞いていた誰かだろう。
「彼女、なんて名前なのか知ってる?」
「あの髪の色は……更識さんとこの妹さんじゃないかな」
この話を聞いていた俺は、山田先生とのやり取りがあるから事実無根とまでは言えないが、それでも面白く脚色された俺の武勇伝がまた一つ増えたのだろうなと感じていた。
授業が終わり放課後になると、俺は自分の教室を飛び出し一年一組の教室と職員室に顔を出していた。
理由は言わずともわかるだろうが、一応言っておこう。
山田先生に会うためだ。
でも、合うことは叶わなかった。
仕方なく懐かしの職員寮の前で待つことにしたのだが、山田先生は現れず、ただ時間だけが過ぎていく。
今日はダメかと諦めかけたそのとき、俺に声をかけてきた人間がいた。
「おい、ベインズ。そこで何をしている」
聞き覚えのある声。
それは一組一組の担任、織斑先生の声のようだ。
俺は織斑先生に身体を向けると軽く会釈をする。
「なんだその顔は。今にも世界が滅亡するとでも言いたげな表情をしているぞ」
俺はそんな表情をしていたのか。
「お前は山田先生を待っているのだろうが、お前がここにいる限り戻ってこないと思うぞ」
やはり俺は山田先生に避けられていたか。
「今日の山田先生は近接格闘を熱心にしていたが、お前のことを浮気者といいながらだからな。どうせお前が、他の女子といちゃついていたのを山田先生に見られたのだろう?」
「確かにそうですが、これには深い事情があるんですよ」
「お前の言う事情など聞く気もない。夫婦喧嘩は犬も食わんぞ。夫婦のことは夫婦間で解決しろ。でないと周りが迷惑をする」
と言った織斑先生は俺の肩を一度ポンと叩くと、はははと快活に笑いながら去っていった。
簡単に解決できるなら苦労はしないよ――というか、そもそも俺と山田先生は法律に基づいた関係じゃないですよ、と言いたい。
織斑先生は俺と山田先生のことには不干渉を決め込むつもりらしい。
人の色恋沙汰に首を突っ込みたくないのだろうが、俺たちを放っておいたほうが面白いか、とか思っていたりしてな。
さすがにそれはないか。
織斑先生の姿が見えなくなると俺も職員寮の前を離れた。
俺が食堂近くの廊下で頬を叩かれてから三日が過ぎた。
あれからまったく山田先生先生には会えていない。
拝啓から始まり敬具で終わる、事の次第を書き記した(但し個人名は伏せている)謝罪メールを送ってはみたが、山田先生からの返事は返ってこず。
どうしたらいいものかと悩んでいるところだ。
それから、うちのクラスの噂好きの女子たちから簪さんが色々言われていたな。
不倫は不
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