悔恨の黄昏
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てくれた。
強くて、優しくて、自分から進んで裏から支えてくれる人。自分は英雄なんかじゃないって言ってるけれど、私の中では燐は英雄だ。
……撃墜された私が言うのもなんだけど、英雄色を好むって言うからか燐の周りには私も含めて三人も彼女がいるけれど。
ユウキもある意味で助かったし、これから皆で幸せな人生を歩める……そう無邪気に信じていた。
でもそれは。
燐が私をかばって刺されたことで泡沫の夢と消えた。
待ち合わせの時間に合うように駅に向かっていた金曜日。
夕飯をなににするかとか明日なにをして遊ぶかとか、これから来る楽しい時間を心待ちにしつつ、駅前にいた燐と目が合ったので手を振った。
早足になりそうな気持ちを抑えつつ、燐に向かって歩いていると突然ユウキの鋭い声が耳に響いた。
「しののん! 走って!」
「へ?」
間抜けな驚きの声が漏れる。
思わず燐の顔を見ると無表情ながら焦燥の色を滲ませた顔でこちらに向かって走り出していた。
訳がわからないが、とりあえず指示に従おう。そう思って私は走り出す。
間の距離が少なくなり、私は走るのをやめたが燐はそのまま私にぶつかってきて、そのまま抱きしめられた。
服の上から見ただけではわからないが、しっかりと引き締まった彼氏の胸元と、背中に回された腕、この場が公共の場所であることもあって疑念はすぐに消失し変わって私を支配したのは恥ずかしさだ。
「り、燐!?」
思わず声をあげてしまったが、燐の返答はなくダンスのように位置が入れ代わったのが辛うじて理解できた。
すぐに離され、振り返った燐の背中から見えたのは、かつての友人にして死銃事件の犯人の一人であり、現在は裁判中であるはずの新川くんが手に持った空の注射器を投げ捨てるところだった。
空の注射器と燐の行動から容易に事情が飲み込めてしまう。
「あっ……ああ……」
「詩乃、下がれ」
そんな時でも燐は冷静だった。
自分のことよりも私を守ることを優先して。
結局、私が動けたのは燐が倒れた後だった。
それも、何も出来ずただただ燐に縋り付いて泣くだけ。
救急車で病院に運ばれていく燐を見送りながら、私はその場にへたりこむことしかできなかったのだ。
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