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追憶は緋の薫り
……やっと、
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分を試してみようと思います』



 そんなの解りきっていた。

 彼らが本当の両親でないことは東雲(しののめ)の家に引き取られる前から知っていたことなのに、そんな訳ないと、言われた気がして体が思うように動かない。

 彼女がまた異議を唱えるが今の彼には何も聞こえないし……何も届かなかった。

 終業式はまるでスローモーションのように過ぎる時間が長く感じた。

 あの日から妹とは一言も口を利いていない。

 幼い頃のものは数え切れないが、少なくとも一週間以内には何らかの方法で解決したが今はあの頃とは違う。

 ようやく終業式を迎えた翌日、まだ明けない内にスポーツバッグに着替えと日用品などを軽く詰め、十年以上世話になった東雲(しののめ)家を後にした。

 風が先程よりも強くなり周囲の木々がざわめく。

 緑で萌えた葉が一斉に擦れるとまるで、責められているように聞こえてくる。



『………………………………死………………………………んで………………っ!!』



 ……やめろ。



『二度と…………ちゃんと…………』



 やめてくれっ!



 鼓動が長距離を完走した時よりもバグバグと強く脈打って胸が痛い。


「大丈夫か!?」


 足跡一つもない雪原に容赦なく爪を立て、いつかのように胸元をギュっと掴む。

 荒くなる呼吸が徐々に体力を奪ってゆく。

 そんな紫紺(しこん)を嘲笑う膝にまともに立って入られなくなり、二人には悪いが地べたに座ろうとした。


「やっぱり具合が悪いんじゃねぇか。待ってろ、すぐ華宵殿(はなよいでん)まで飛ばす」


「い、いいっ………………それよりっしばらくこうして置いてくれないか……気分が落ち着くまで」


 崩れそうになる寸前、腰に腕を回され、抱きとめられた。

 右近(うこん)左近(さこん)も感が良いと言おうかとても気を遣ってくれる。

 きっと二人が人間だったら何の職もそつなくこなすだろう。

 頬を寄せた薄い胸はひんやりとしていて実に心地が良い。

 追憶の彼方にもこうしてもらったことが何度かある。

 背中に回された手が切なげに摩る。

 きっとこいつは誤解をしている、彼の鼻を抓ってやりたいがあいにくの体制に加えた身長差がものを言い、実行に移せないのに逆に腹が立った。


「いいからもう離せっ!」


 草履を履いた足を振り上げ、思い切りの力で脛を蹴る。

 弁慶の泣き所とはよく言ったもので、左近(さこん)は早急に彼を開放するなりその場で飛び跳ねている。


「何すんだっ!!」


「それはこっちの台詞だ」


 無理もない、華宵殿(はなよ
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