第百六十三話 紀伊での戦その十二
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彼等は戦い続けた、敵はかなり減ったがそれでもだった。
戦いを止めない、最後の門徒達を倒した時にはもう夕刻だった。
その夕刻の中でだ、信長は倒れ伏す門徒達の屍を見て言った。
「またじゃったな」
「門徒達との戦はですな」
「最後の一兵とまでじゃ」
戦うことになるとだ、信長は家康に言った。
「こうなるわ」
「そうですな、三河でもでした」
「不思議と灰色の服の者達にはない」
「戦になろうとも」
「あっさりとしておる」
灰色の、本来の者達はというのだ。
「ここまで戦うことはない」
「ですな。しかし」
「闇の服の者達はな」
見ての通りだった、山々の間の夕暮れの中で屍を晒す彼等を見ての言葉だ。
「この有様じゃ」
「誰もが死ぬまで戦いまするな」
「尚且つ武具もよい」
このことについても言った。
「実にな」
「鉄砲が多いことも」
「おかしなことじゃ」
「三河でもそうでした」
家康は自身の三河での戦のことも話した。
「この服の者達は」
「えらく強くじゃな」
「しかも数が多く」
「一人も降ることなく」
「戦いました」
そうだったというのだ。
「この通りです」
「そうじゃな、どういう者達じゃ」
「さて。それは」
家康にもだった。
「見当がつきませぬ」
「顕如なら知っておるか」
信長はこうも言った。
「あの者ならな」
「他ならぬ本願寺の法主殿だからですな」
「知っておるのが道理じゃな」
「その通りですな、それでは」
「一度聞いてみようぞ」
信長はこのことも決めた、そしてだった。
まずはこの度の戦に勝てたこともよしとした、そして目の前にある紀伊という国をどうしていくのかを考えるのだった。
第百六十三話 完
2013・12・14
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