第百六十三話 紀伊での戦その十一
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本軍からも法螺貝が鳴った、そうしてだった。
その法螺貝の声を聞いた瞬間にだ、信長と家康が率いる本軍は反転した。そのうえで槍を敵に向けてだった。
突進する、それは彼等だけではなかった。
柴田もだ、己が率いる全軍に叫んだ。
「掛かれ!」
「はっ!」
「今より!」
「まずは山を降りよ!」
彼等が今いる山をだというのだ。
「そして道を塞ぐのじゃ」
「そのうえで、ですな」
「敵を攻めるのですな」
「我等は殿の軍勢と前後で敵を塞ぐ」
その進む先も退く先もだというのだ。
「ではよいな」
「畏まりました」
盛政が燃え上がる目で柴田に応えた。
「では今より」
「これで紀伊はもらったわ」
柴田は鋭い目でこうも言った。
「あの者達を倒せばな」
「そうですな、完全に」
「石山は気になるが」
だがそれはだった。
「今は何よりもじゃ」
「あの者達を倒してですな」
「それが先決じゃ。では山を降りるぞ」
己が率いる軍勢に告げてだ、そうしてだった。
柴田が率いる軍勢が山を降りて門徒達の退路を塞いだ、これで彼等は進退を完全に塞がれた。そのうえで。
山々から鬨の声があがり一斉に山を降る、その降った勢いでだった。
織田軍は門徒達の軍勢の腹を一気に蹴った、その蹴りを受けた門徒達は。
忽ちのうちに総崩れになった、横に伸びきっていたところに思わぬ攻撃を横から受けてそうなってしまったのだ。
そしてだ、その彼等にだった。
織田軍は激しく攻める、槍で突き刀で切る。信長もまた自ら前線に立ちそのうえで采配を手にしてこう言った。
「よいか、ここでじゃ」
「はい、ここでですな」
「紀伊の門徒達を」
「倒す」
まさにだというのだ。
「そうするぞ」
「わかりました、では」
「今は」
「うむ、ではな」
「ここはですな」
「一気に攻めて」
「この戦を決めるぞ」
信長は馬上から言った、そのうえで采配を執るのだった。
織田軍、徳川軍も含めた彼等は門徒達を瞬く間に倒してしまった。だが流れはこれまで通りのものだった。
降伏しない、滝川は敵を倒しつつ苦い顔で呟いた。
「いつも通りか」
「うむ、どうもな」
その滝川に応えたのは梁田だった、彼もまた戦っている。
「降らぬわ」
「一人としてな」
降らない、そうして戦っているというのだ。
「では最後の最後までな」
「戦うしかないな」
「どうやらな」
こう話してだ、そしてなのだった。
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