第百六十三話 紀伊での戦その七
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「参りましょうぞ」
「ではな。ここで一気に勝ちじゃ」
「そしてですな」
「紀伊一国を収める」
そうするというのだ。
「そうするぞ」
「紀伊もですか」
「紀伊もまた大きな国じゃ、収めれば大きい」
信長は紀伊を手に収めそして治めることも考えていた、そのうえでの言葉である。
「攻め入ったならばじゃ」
「そこまでされればですな」
「収め治める」
そうするというのだ。
「必ずな」
「それでは」
「行こうぞ」
家康にも言ってだ、そしてだった。
信長達も発った、夜明けの前には彼等もそうしていた。そしてその空になった陣と動く織田軍と徳川軍を見てだった。
門徒達はだ、こう言った。
「逃げたな」
「うむ、逃げたぞ」
「我等の大軍に臆したか」
「その様だな」
こう話してだ、そしてだった。
彼等は信長の軍勢を追いはじめた、しかもだった。
彼等は信長の馬印も見た、しかもそれだけではなかった。
「あの馬印は徳川ぞ」
「徳川家康ぞ」
「あの者も来ておるのか」
「なら余計に都合がいいな」
「全くじゃ」
信長だけでなく家康も討ち取れる、そう思ってだった。
彼等は追う、まるで獲物を見付けた獣の様に。しかしだった。
信長もまた彼等を見ていた、兵を退かせながら家康に言うのだった。
「来たのう」
「そうですな」
家康も敵を見ながら彼等に応える。
「では我等は」
「このまま退く」
まずはだ、そうするというのだ。
「そしてな」
「然るべき場において」
「馬の首を返す」
即ちだ、反転するというのだ。
「そうするとしようぞ」
「では。ただ」
「敵の動きか」
「思ったより速うございますな」
家康が今言うのはこのことだった、確かに彼等は徒歩にしては相当な速さだ。それで信長にこう言うのだった。
「追いつかれませぬか」
「大丈夫じゃ、そう思ってじゃ」
ここで信長は周りを見る、今彼等が率いている兵は。
「足の速い者を選んだ」
「そうされました」
「それは御主達もじゃな」
「いえ、我等はそうしておりませぬ」
家康は兵は選んでいないというのだ、足の速い者達は。
「どの者も」
「その割には動きが速いのう」
「三河者は足が速うございまして」
「それだけ足腰が強いということじゃな」
「何しろ武辺者ばかりなので」
それでだというのだ。
「足も強うございます」
「しかも一人としてな」
信長は三河の者達を見る、見ればその黄色の者達はというと。
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