第九話 風の力その十五
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「いえ、確かに私は養子ですが」
「それでもなのね」
「両親にも妹達にも実の家族として大切にしてもらっています」
「それはいいわね」
「はい、まだ赤ちゃんの時に当時子供がいなかった両親に迎えられて」
そしてだというのだ。
「それから妹達が産まれて」
「それでなの」
「家を継ぐのも私としてもらっています」
「お家!?」
「とりあえず詳しいお話をしたいのですが」
桜は自分から四人にこう申し出た。
「宜しいでしょうか」
「ああ、ちょっとお互いに話したいな」
薊が桜の今の申し出に真剣な顔で応えた。
「それじゃあまたお店に入るか」
「えっ、それじゃあ」
「食いながら話をするかい?」
「それはちょっと」
首を傾げさせてだ、裕香は薊がまたお好み焼き屋に入って話そうという提案に対してこう言ったのだった。
「お腹一杯じゃない?」
「いや、あたしはまだ入るけれどさ」
「寮の晩御飯があるから」
「ああ、晩御飯のことがあったな」
「そう、だからね」
「今はか」
「別の場所でお話しよう」
こう薊に提案するのだった。
「何処かね」
「それでしたら私のお家でお話しましょう」
桜がにこりと笑って提案してきた。
「そうしましょう」
「桜ちゃんの家?」
「はい、そうです」
そこでだというのだ。
「そこでお話しましょう」
「そういえば桜さんのお名前だけれど」
菖蒲も言ってきた、ここで。
「文曲だったわね」
「はい、そうです」
「絹問屋だったわね」
「和服も売っています」
「八条百貨店にもお店を出している」
「はい、ですから」
それでだというのだ。
「そこでお話しましょう」
「そこの跡継ぎさんなのね、桜ちゃんって」
菊はしみじみとしてこう言った。
「じゃあお婿さんは大店を桜ちゃんと一緒にやってくの」
「あの、大店では」
「何言ってるのよ、文曲屋って神戸でも有名な絹問屋さんじゃない」
菊は神戸で生まれ育っている、それで言うのだった。
「大店も大店じゃない、老舗の」
「そうですか」
「そこの跡継ぎ娘さんだったのね」
しみじみとして言う菊だった。
「いや、可愛いしお嬢様で。お婿さん果報者ね」
「結婚ねえ、何か想像出来ないな」
そのことはとてもだと言う薊だった。
「あたし嫁貰うとか言われてるからな」
「お嫁さんですか」
「そう言われてるよ、いつもさ」
桜の問いに笑って返す。
「あたし男だってな」
「男ですか」
「そう見えるかね、本当に」
「そうは思えないですが」
「だといいけれどね」
笑って返した薊だった、そうした話をしてだった。
何はともあれ一行は桜の家に入りそこでお互いのことを話すことになった。桜は自分のバイクを手で曳きながら四人を
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