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少年の希望
石尾意志
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「あれ、院長さんに顔がにているからそうなんじゃないかっておもったんだけど?ちがったかな?ごめんね。」
と、彼女はそう言った。
「いや、ちがわないけど。そんなに父さんの顔に似てるかな?」
ぼくは、自分の顔も父の顔もそこまで意識していないから父に似ているといわれてもそこまでピンとこなかった。
「顔じゃないんだけど・・・なんというか・・・雰囲気が似ているんだよね。」
「ふうん・・・」
ぼくは雰囲気が似ているといわれても、それこそピンとこなかった。
まあ、同じ地獄みたいな場所に生きている者同士雰囲気が似ていてもおかしくないともおもうけど・・・・
「君はいいお父さんをもってるね。」
はて、ぼくにはかのじょのいっていることの意味がわからなかった。
あの父をいったいなぜいいといえるのだろうか・・・・・。
「ぼくには父さんをいいとは思えないし、思いたくもない。」
あんな自分の苛立ちをはらすためだけに・・・八つ当たりのように人を救う人なんて、到底いいとはおもえない。
いや、父からすれば救っているのではなく、人に自分を救うように促しているだけなのだろうけど・・・・
「そうかな。私はそうとは思わないけど・・・・。私46病室にいるんだ。もし、ひまだったら来てくれない?」
私これからリハビリあるから。と彼女はそういってリハビリ棟の方に消えていった。
5年前からぼくの父は変わってしまった。
それはしかたがないことだったのだろう。なにしろ、父は最愛の人・・・・父にとっての妻。すなわちぼくにとっての母を亡くしてしまったのだから・・・・。
ぼくはその時、まだ小四だったから人が死ぬということがいまいちまだ理解していなかった。
あと、数日もたてば目をさますだろう・・・とそう思っていたし、それでも起きなければきっと父が起こそうとするだろうと・・・だって父は医者なのだから、医者は万能なのだから・・・・と、夢を・・・希望をいだいていた。
医者だからといって万能なわけがないのに・・・。そんな、あまい幻想を信じて、もう二度と母と話すことも、会うこともできなくなるという事実を疑いもしなかった。
母は、事故で死んだ。・・・正確に言えば、事故のあとに自殺をして死んだ。
母は、その死の前日までとても元気そうであった。しかし、翌日、突然母は病院の屋上から飛び落ちた。
それからというもの父は、何かに取り憑かれたように人を救おうとした。
より多くの人を救おうとした。その姿をみて、ぼくは八つ当たりのようだと思った。自分に対する怒りを他人を救うことで慰めているかのようだった。それはまさしく自罰のようだった。
その時からぼくは父のことが嫌いになった。
他人がいなければ自らの罪を償うことすらできない。そんなものはぼくが思っていた父の理想像とはちがった。ぼくは父がそんなにも
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