少しでも前に進めたら
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止めたティアは躊躇いがちに、呟く。
「その・・・と、友、達・・・にっ・・・なって、ほしいん・・・だけど」
途切れ途切れの、ぶっきらぼうな言葉。
今のティアにはこれが限界だった。
戸惑うように視線は落とされ、恥ずかしいのか頬は淡い朱に染まり、忙しなく視線が動く。
「・・・」
ジュビアは、言葉が出なかった。
雨女だから、と、今まで友達が出来た事は無かった。
今―――――初めて、友達が出来ようとしている。
しかも、不器用で、素直になれなくて、友達になってほしいの一言にここまで苦労する、見た目によらず随分と可愛らしい健気な友達が。
「・・・っはい!ジュビアでよければ、喜んで!」
パァッ、と。
ジュビアは笑った。花が咲くように。
それにつられたかのように、ティアも嬉しそうに目を細めた。
似ている、と思った。
ジュビアと、ティアと、シュランは。
3人とも人から嫌われる何かがあって、それに押し潰されそうになりながら生きている時があった。
シュランはガジルとザイールによって救われ、ジュビアはグレイ(ルーもいたけど知ったこっちゃない)によって救われた。
(だから・・・)
ティアは、まだだ。
救いを拒んだ訳じゃない。理由を誰にも教えなかったのだ。
知らない事に対して、手を差し伸べるなんて出来ない。
そして――――――知っている事に対して、無視を決め込む事も出来ない。
(ジュビアは・・・)
雨女じゃなくなった、あの瞬間。
一言じゃ片付けられない、片付けてはいけない嬉しさが込み上げてきた。
あの時の嬉しさは、きっと一生忘れないだろう。
シュランだって、きっとそうだ。
声がザイールに届いた時、言葉が外に届いた時、言いようのない嬉しさがあっただろう。
(ティアさんを・・・)
ティアもその嬉しさを味わったって、いいはずだ。
重く圧し掛かっていた出来損ないのレッテルを剥がして、カトレーンの一族の掟に縛られなくて、“ティア”として生きる事に嬉しさを覚えていいはずだ。
(助ける!)
―――――――傍にこんなに人がいるんだ、と知っていいはずだ。
嫌われ体質じゃないと知って―――――いいはずだ。
「はあああああああああっ!」
あの時の涙は、温かかった。
あの時の言葉は、凍てついたティアの心を溶かす鍵になった、とジュビアは思っている。
でも、まだ完全じゃない。
きっと、完全に溶ける事は、ない。
(それでも・・・)
そんなの解っていた。
人の心は、簡単なモノじゃない。過去1つを乗り越えるだけで全てが変わる訳がない。
17年も放っておいたのなら、尚更だ。
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