少しでも前に進めたら
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「だから、きっといつか、ティアさんを好きになってくれる人が現れます。ジュビアは予知とか予言とか出来ないけど・・・絶対に、現れます」
2人の青い髪が、風に靡く。
再建工事に励むメンバーの声が聞こえる。
「だって、ジュビアはティアさんが好きですから」
優しく、柔らかく、ジュビアは微笑んだ。
ティアの目が見開かれる。
「可愛くて、テキパキしてて、さり気なく誰かを気遣う事が出来る・・・それって、誰にも出来そうで、誰にも出来ない事だって、ジュビアは思うんです」
ジュビアの念に気づいたのか否か、ナツから弁当を取り上げてグレイに渡して。
きっとすぐ空腹になるだろうと予測して、1人で食べるには量の多い弁当を作って。
1週間グレイを見つめ続けるジュビアに、グレイを呼んでこようかと声を掛けて。
本人としては何でもない事だったのだろう。
その“何でもない事”が、全て繋がって今に至る。
「!ティアさん!?」
「・・・何?」
すると、ティアに目を向けたジュビアが目を見開いた。
どうしてそんな表情をするのかが解らないティアは首を傾げる。
その問いに答えるようにジュビアはハンカチを取り出し、差し出した。
「・・・泣いてますよ?」
言われて、気づく。
頬に触れると、濡れていた。
止めどなく溢れる涙を覆い隠すように両手で顔を覆い、ティアは俯く。
「ど、どうしました?ジュビア、何か嫌な事言っちゃいましたか!?」
「違・・・っ」
慌てるジュビアの誤解を解こうと、ティアは首を横に振る。
それでもなお、あわあわと慌てるジュビアに、ティアは呟いた。
「私にもよく解らないけど・・・こう、心がほわって温かくなって・・・涙が・・・」
手の甲で涙を拭うティアの目元を、ジュビアはハンカチで優しく拭っていく。
あまり感情を表に出さないティアは、“感情”をあまり知らない。
嬉しい、とか、悲しい、といった単純なものならともかく、複雑で曖昧な、たった今湧き出た感情を、表す事は出来なかった。
「・・・ごめんなさい、ハンカチは洗って返すわ」
「いえ、気にしないでください!」
しばらくして。
泣き止んだティアの言葉に、ジュビアは明るく笑った。
雨女だった頃は浮かべるどころか、作る事さえ出来なかった笑顔だ。
それもこれもグレイ様のおかげです、とジュビアは心の中で感謝する。
・・・その場にルーもいた事は、完全に忘れられているが。
「ジュビア・・・だったっけ」
「はい」
こくり、と頷く。
ティアは帽子の鍔をつまんで深く被り直し、目線をあちらこちらへ彷徨わせた。
やがて、彷徨わせるのを
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