第5章 契約
第90話 朔の夜
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ばれ、ブリミルの如く四人の后を得る事が約束された俺に、相手が例え神であろうとも従わせられない訳がない」
静寂に満ちた闇の中に、アルマンの声だけが響く。自信に満ちた言葉、及び王者の如き雰囲気で。
そして俺の答えを待つまでもなく、ひとつ呼吸を整えた後に再び言葉を紡ぐ。
「人を越え、神を越えた俺に不可能な事などないわ」
吐息を白く凍らせる事もなく。
しかし……。う〜む、どのような根拠が有ってこれほど自信に満ちた態度で居られるのか判りませんが、どうやら、コイツは捨て駒と言う事は理解出来ました。
何故ならば、
「オマエ、ソルジーヴィオにちゃんと話を聞いたのか?」
こちらの準備が未だ整っていない以上、少々の時間稼ぎが必要かな、と考え、このヌケ作の相手をする心算でしたが、どうやらそんな必要は無さそうなので少し弛緩した雰囲気でそう問い掛ける俺。
そして、更に続けて、
「邪神テスカトリポカと敵対する羽毛ある竜ケツアルクァトルの人間としての姿は、オマエと同じ、気品ある王者の風度を持つ金髪碧眼の男の姿。そんな容姿を持つ人間が召喚したトコロで、テスカトリポカが召喚に応じる可能性は低い」
それに、縦しんば召喚に成功したとしても、其処から更なる悲劇が発生する。
テスカトリポカは、自らを信奉する民たちを虐殺して行ったイスパニアの人間を許す事は有りません。そして、イスパニア……スペインと言う国は、このハルケギニア世界ではガリアの事。ガリアの国で金髪碧眼の貴族然とした人間。それも、地球世界のキリスト教に近いブリミル教の神に選ばれたと自称して居る人間に召喚されて、ソイツの言う事を聞く訳がないでしょうが。
おそらく、この目の前の道化者はサクっと殺され、その後、誰かに調伏されるまで、周囲に存在する人間たちを殺して、殺して、殺し続けて行く事に成るのは確実でしょう。
もっとも、その召喚作業に必要な最後の生け贄。俺の心臓と血を得る事が事実上不可能だと思いますから、テスカトリポカの召喚作業自体が完結する可能性は初めからゼロに近いのですが。
「自らの欲望の果てに自滅するのは勝手やけど、そんなしょうもない事に俺を巻き込むな。俺の周りの人間を巻き込むな」
最早、敵対するしかない言葉。その言葉を発したその瞬間。
遠雷に似た爆発音が俺たちの背後。ルルド村の方向から轟いた。
その一瞬の後、不気味なまでに静まり返っていた森に一陣の風が吹き抜け、周囲を取り囲む形と成って居た連中の黒きフードがはためく。
その瞬間。僅かに垣間見えた、まるでネコ科の大型肉食獣を模した仮面を付けているかのような容貌に、俺の見鬼が伝えて来ていた情報が誤って居なかった事を確信する。
そうして、
「始まったな」
そ
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