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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第90話 朔の夜
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因って管理されて居たと言っても、ほぼ全てが自然の手に因って作り上げられた冬枯れの暗い森から、突如、視界の開けた場所へと到達。其処の入り口で歩みを止める俺とタバサ。
 但し、ここは知って居る場所。陽が有る内に、風の精霊王に連れられて一度訪れているあの場所ですから。

 その瞬間。

「待って居ましたよ、オルレアンの姫と、それに王太子殿下」

 暗がり……。光源と言えば、上空から煌々と照らす蒼き偽りの女神。そして、その女神が放つ光の矢を反射する泉の赤黒く変色した水が有るだけの暗い場所。その黒の世界から掛けられる男性の声。
 自らの手にする魔法に因る光源を、その声の放たれた場所へと向ける俺。
 尚、本来ならばこのような行為は必要のない行為。何故ならば俺、そしてタバサも暗視の魔法は行使済み。例え暗闇に居たとしても丸見えの状態ですから。但し、兵は詭道。この世界の魔法の常識では、ライトの魔法を行使しながら、同時に他の魔法は行使出来ない仕組み。故に、この照明用の魔法を行使し続けて居る限り、他の攻撃的な魔法は行使出来ないと相手が思い込んでくれる……。つまり、自分たちの方が優位に立って居ると油断させる事も可能と成る、と言う事。
 もっとも、俺の行使して居る魔法は時間設定型の魔法。つまり、ある一定の時間だけ明かりを点す魔法ですから、最初に霊力を消費したら、それ以後は意図的に消さない限り効果時間内は自動的に明かりが灯り続ける魔法なのですが。

「それにラバンも良くやってくれた。このふたりにルルド村に居られると、最後の重要な生け贄を得る事が出来なく成る所だったからな」

 この森の中にぽっかりと開いた空間。泉の畔に辿り着いてからもその歩みを止めず、その声を発した人物の傍にまで進んでいたラバンに顔を向け、そう話し掛ける男。

 其処……それは泉の傍ら。僅かな光源が蟠る闇を仄かに薄める空間。その、まるで寝台の如き巨大な岩の傍に立つ黒き複数の人影。
 フード付きの黒いマントに覆われた複数……おそらく八人の影。そして、その中心に立つ、見た事の有るマントに身を包んだ、金髪の男。

 そう、髪の毛は金髪。そして、見事な口髭。猛禽類を思わせる強い瞳の色は碧眼。但し、妙に赤い……充血したかのような、赤い印象を受ける瞳。目鼻立ちがはっきりしていて、育ちの良さが気品と成って現れている容貌。……日本人が西洋の貴族と聞いて真っ先に思い浮かぶような精悍な顔立ち。身長は俺と同じ程度か、少し大きいぐらいと感じるトコロから、おそらく百八十センチ以上。頭には白い羽飾りの着いたつばの広い帽子。懐古趣味のベストと白いシャツ。膝丈のキュロットに白いタイツ。
 今年の夏、国王への反逆の罪で滅ぼされた東薔薇騎士団の制服を着込んだ痩身の男性。
 東薔薇騎士団の基本形。顔の大半が髭で覆わ
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