第5章 契約
第90話 朔の夜
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るブリギッド。
タバサの方は俺の答えが完全に予想出来て居たと言う事でしょう。
ブリギッドの方は、……もしかすると、俺が風の精霊王の言う通りにリュティスへと帰って仕舞う可能性も有る、と考えて居た可能性も有りますが。
「成るほど。ある程度の覚悟は完了している、と言う事か。
そう言えば、ハクも同じように一度言い出したら聞かんトコロが有ったかな」
懐かしい事を思い出したかのような遠い視線を蒼穹に向け、少し眩しそうにその金眼を細める風の精霊王。どうやら、彼女と、そのハクと呼ばれる人物との間には、何か良い思い出が有ると言うのでしょう。
思い出。良い思い出と言う物は人を優しくさせる。そう確信させる雰囲気に包まれている風の精霊王。その時には、彼女の現在の姿と相まって非常に愛らしい雰囲気を感じさせられた。
しかし、次の瞬間には再び俺の方に視線を向け、
「但し。そう言うからには、少なくとも何か策が有る。そう考えさせて貰ってもかまへんと言う事なんやろうな」
☆★☆★☆
冬至の弱々しい陽光が、しかし、今宵に相応しい色に世界を染め上げる時刻。
赤、赫、そして紅。直ぐそこまで迫りつつある夜の気配さえ、血のような残照に染まる世界。
陰と陽。生と死。昼と夜の境界線。
昼……陽の光が溢れた時刻。あの見鬼を行う為に、中央広場に村人たちを集めた時は、確かにこの村にも村の規模に相応しい住人が居る事を確認出来たはずなのに、今のこの時刻に村から感じるのは夕陽の赤以外、妙に寂寞とした雰囲気しか存在する事はなかった。
「騎士さま、騎士従者さま、少し宜しいでしょうか?」
ルルド村の入り口に人待ち顔で立つ俺と、そして、その傍らにそっと……他人から見ると、まるで寄り添うようにすぅっと立つ少女。
微妙に、郷愁を誘われるような景色の中心に立つ彼女を見ていると、訳もなく涙が込み上げて来る。
そう。蒼の髪までも赤く染め上げ、無機質なはずのその表情に何処か哀しいような、それで居て懐かしいような色を感じるのだ。
「えっと、貴男は……」
背後から掛けられた男性の声に、振り返ってそう答える俺。
赤く染まった世界の中心を、少し目を凝らすように見つめる俺。その瞳の中心に映る背の低い男性らしき影。
「ラバンと申します、騎士従者さま」
そう言いながら、痩せた身体を更に縮ませるように頭を下げる男性。良く動く細い目。どうにもはっしっこそう……狡猾で、信用の置けない人物のように見えるその男性。
いや、午前中に会った時よりも更に強く感じる負の感情。正直に言うと、任務に関係がないのなら絶対に近寄らない類の人物であるのは間違いない。
ただ……。
「それで、ラバンさん。何か御用でしょうか?」
自ら
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