第5章 契約
第90話 朔の夜
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、ハッとしたように上空をふり仰ぐアルマン。この反応は、ヤツも気付いたと言う事。そう。先ほどまで確かに闇に閉ざされていた周囲の風景が、人間の肉眼でも見えるように成って居た。丁度、除夜の鐘の音が聞こえて来た時から、周囲が急に明るく成って来ていた、と言う事に……。
ゆっくりと。まるで操り人形のソレの如く、上空に視線を移すアルマン。
其処には……。
オーロラ……。いや、違う。オーロラはこのような幾何学的な紋様を描き出す事はない。これは、寒々とした氷空に、炎に因って描き出された五芒星。
その五芒星のそれぞれの頂点の部分には何らかの図形、そして、明らかに漢字と思しき文字が描かれていた。
「オマエさんは知らんと思うから教えて置いてやろう。あの文字は大。妙。法。そして、鳥居を模した形に、舟を模した形や」
そう俺が答えている最中にも、更に強く成って行く違和感。赤々と燃える五芒星と、そして、その文字に籠められた呪が蒼き偽りの女神の魔力を徐々に凌駕して行く……。世界の理が上書きされて行く際に発生する違和感が身体の感覚を僅かに狂わせている。
そう、この瞬間。西洋風剣と魔法のファンタジー世界のハルケギニアには有り得ない魔法が誕生したのだ。
ゆっくりと冬枯れの森に広がって行く力を感じた。そう、それは正に生命の息吹。未だ堅いつぼみさえ付けていない木々に、何故か萌えるような緑を感じ、
紅く、そして冷たく穢された泉に、新しい清かな水が溢れ出す。
いや、この瞬間には枯れ、既に力……生命力を完全に失って仕舞った枯れ木でさえも、ざわざわと枝を振るい、自らに流れ込んで来る強い生命力に歓喜の歌を上げ出して居た。
「施餓鬼供養に使用される五山の送り火。そして、風水術を利用して、冬至の夜の闇に沈む陰気に支配されたこの場所を、一時的に生命力に溢れた陽気溢れた世界へと変換している。
陽の聖獣たる俺に取っては、この地は正に生門。
しかし、陰気の塊のキサマに取って、ここは正に死門。ここでは動く事さえままならないはずやで」
かなり淡々とした口調でそう説明を終える俺。
ここは風水的な陣を張るには少し向いていない場所。北方に霊山は存在せず、東西の街道よりも南北の街道の方が重要とされて居る場所。
更に、ここに連れて来ている式神たちに四聖獣の代わりは難しい。
故に、少し特殊な。しかし、年の終わりと言う時節を利用した術ならば可能。それに、そちらの方がより効果も期待出来る、……と考え、この特殊な術を行使したと言う事。
それに準備する時間さえあれば、この規模の仙術を行使する事さえ可能と成って居るのも事実。これは多分、俺の仙人としての格が地仙レベルでは納まらなく成って来て居ると言う事なのでしょう。
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