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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第90話 朔の夜
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の爆風らしき一陣の風に完全に余裕を取り戻したアルマンが、彼の見た目に相応しい声でそう呟いた。
 その言葉に重なるように続く爆風と轟音。静寂に包まれていた冬の夜に突如訪れた強い争いの気配。

 成るほど。この場所に来てから何度目に成るのか判らない首肯きをひとつ見せる俺。
 そうして……。

「確かに、始まったようやな」

 そうして、声の質で言うのなら明らかな青年……には成り切っていない、未だ少年の部分を残した俺の声で後を続けた。
 但し、非常に余裕のある雰囲気で……。そう。それはどう考えても、周囲を敵に囲まれ、更に護るべき民や場所を異形のモノたちに襲われつつある状況とは思えない態度で。

 俺の言葉に、少し訝しげな視線を向けるアルマン。元々優しげな目元、と言う訳ではない彼からこう言う視線を向けられると、気の弱い人間ならば萎縮をし、その場で立ちすくむしか方法がなく成るであろうと言う視線。
 それに、確かに普通に考えたら俺の台詞はおかしい。しかし、

「そもそも、ルルドの村を放り出して、こんなトコロにノコノコと俺とシャルロット姫がやって来て居る事を訝しむべきやと思うけどな、アルマンさんよ。まして、ガリアの王太子と、将来の王太子妃が動いて居るのに、このふたりだけで行動していると考えたのなら、それは大甘やと思うけどな」

 それとも、オマエの同僚だったイザークやアンリは、それほどのマヌケだったと思って居たのか?

 王太子と王太子妃と言う部分にかなりの違和感を覚えながらも、それでも澱みなくそう続けた俺。それに、これは半ば事実。
 もっとも、現実には、ガリアから兵や騎士を借りている訳ではなく、自前の戦力を投入しているのですが。
 流石に無駄に成る可能性も有ったのですが、それでもルルド村に戦力を残して来て正解だったと言う事ですから。

 その、俺の余裕たっぷりの言葉を聞いた瞬間、

「そうか、あの女騎士か!」

 アルマンの傍に控えて居たラバンがかなり憎々しげにそう呟いた。
 もっとも、今も遠くから聞こえて来る爆音と、それに伴う爆風は崇拝される者ブリギッドが為している物では有りませんが……。

 村の防衛要員として残して来たのは白猫姿の風の精霊王。俺の契約しているハルファス、炎の精霊サラマンダー、水の精霊ウィンディーネ。そして、俺自身の飛霊と剪紙鬼兵十体。
 誰も居なかったはずの目の前に彼らが顕われた時には、流石のルルド村のアブラハム村長さんも跳び上がらんばかりに驚きましたが、それでも、夜の翼と言う伝説上の吸血鬼を復活させる為に、今宵、ルルド村を襲うヤツラが現われる、と告げた時ほどでは有りませんでした。

 それで、飛霊と剪紙鬼兵に関しては以前のゴアルスハウゼン村の時のように、風のスクウェアスペルの遍在だと
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