第一章 〜囚われの少女〜
帰るべき場所
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たようにジャックは横に崩れ落ちていく。皆はそれに驚いて見ていることしかできなかった。
するとジャックの落とした影が立ちのぼり、絨毯の敷かれた床とぶつかる前にその体を持ち上げた。
「おっと。やっと出られたぜ」
影は男になった。黒い髪に赤い瞳。黒いマントのその姿は、まるで悪魔だった。
「アンタは……一体!?」
ジャックを抱きかかえる男に、団長は向き合う。
「へへ、こいつにはもう少し働いてもらわねぇとな」
男はそう言うと、背を向けて去ろうとする。
「待ちな、ジャックがいなくなったのはアンタの仕業かい?」
団長の問いかけに、ニタリと邪悪に微笑む。
「ああ、そうだ」
コウモリの翼の生えたその、只者ではない背中を団長はにらむ。
「何者だ! ジャックを返しな!」
しばらく沈黙が流れるが、男は振り向き赤の瞳を光らせる。
「それはできないな。……まぁ、これだけは教えてやる。オレの名前は――」
そう言い残し、男は消えていった。
「なんだ……今の」
皆の目前でジャックは再び姿を消した。
「ジャック……団長! どうすればいいの!?」
絶句するシド、慌てるミカエラ。
「これだけはわかったぜ。あいつ、逃げたわけじゃなかったんだな」
「何とかして連れ戻さなきゃ……!」
団長は冷静に考えを巡らせる。
「どこへ行ったのか見当もつかないわね」
皆、首を傾げる。
「あの男なら城内へ向かうはずよ」
と、そんなことをさらりと言ってのけたキャスリンに三人は驚く。
「え!? わかるの? 知ってるの!?」
ミカエラの驚きにキャスリンはうふふと笑い、
「まあね。そろそろ私は行くわ」
そんな答えを言ったかと思うと、カーテンの向こうにするりと消えた。
「――ありがとう、楽しかったわ」
−第二十五幕へ−
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