第一章 〜囚われの少女〜
帰るべき場所
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「そうそう。そしたらこの子を連れていてね」
そう言ったミカエラの後ろから、先程の妖精役の少女が顔をのぞかせる。しかしジャックには見覚えのない顔だった。そうして少女はミカエラに隠れるように、同じ椅子に小さく座る。
「あなたがむりやり……」
上目づかいでジャックを見る、少女の頬はほんのり赤い。
「やったじゃねぇか! お前も男だな」
そう言ってシドが肩を組んでくる。
(何のことだ……してない! 僕は何もしてないぞ?! しかも無理やりだと?)
「ジャスミン……じゃなくて、キャスリンちゃんだっけ? 妖精役、とっても上手だったわよ?」
ミカエラに言われて少女はさらに照れた表情になる。
「ミカエラさんったら……」
そんな和やかなムードだったが、構わずジャックは疑問をぶつける。
「誰なんだ?」
さすがに周りは驚いた。
「ジャック、アンタ頭でも打ったの?」
団長はそう言うが、先ほど言われた内容はジャックにはまったく信じられなかった。
無意識のうちに自分は思わぬ行動をしてしまったのだろうか。それはまるで、誰かが自分に成りすましていたようで気味が悪い。しかも絶対に自分ならしないと言い切れるような行動――ましてや土下座などという不衛生かつ不名誉な事をしたとは。
「まぁでも……たしかに。可愛い子ちゃんがどういう子なのか、知りたいよな〜」
ジャックが青ざめている事にかまわず、からかうシド。
キャスリンは相変わらずミカエラにくっついて恥ずかしがっている。
そうしていると控室のカーテンの向こう、外側から声が聞こえた。
「キャスリン? ここにいるの?」
その声を聞くとキャスリンは目を見開いた。
そして立ち上がる。
「姫様!」
その瞬間、場の空気が一気に静まり返る。
「え!?」
ミカエラとシドは声をあげて驚く。
次の瞬間カーテンを払いのけ、皆の注目を一身に現れたのは、間違いなく一国の姫君の姿だった。
団員は皆、息を飲む。
それからひそひそと話し声が飛び交う。
「わ……まじ本物だぜ」
「近くで見るとホントにキレーだな」
「うんうん、あれはやばい。というか、今捕まえたら仕事が終わるんじゃないか?」
姫は他の者には目もくれず、真っ直ぐキャスリンの元へ向かった。
「キャスリン! びっくりしたわよ〜。 でも凄かったわ! 感動しちゃった!」
そこに在るのは姫の姿をした、16才になった年ごろの少女だった。
そして周囲の視線を感じ、我にかえる。
「あっ……その、皆様方。この度はわたくしの生誕記念などというもののために、我が国『オレリア』まで、遠路はるばるお越しくださいまして。誠にありがとうございます」
姫という貴賓に謙虚さを兼ね備えた挨拶を皆へ述べる。
「お疲れの所このように
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