第一章 〜囚われの少女〜
少年と小鳥
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「ごめんなさい……」
少年は少女の手を引こうとしましたが、少女の足はそこから動きませんでした。植物のつるが絡まり、それは少女の足と同化していたのです。
「私はきっと、ここじゃないと生きていけないの……」
そう言って笑う少女の表情は、少年の心に痛々しく映りました。
「だから言ったのよ、自由なんて……」
言いかけた少女は言葉を止めました。少年の瞳からぽろぽろと、大粒の涙がこぼれたのです。
「ちょっ……泣かないでよ! 泣いたってどうにもならないわ! 私だって泣けたら苦労しないわよ!」
慌てる少女へ、少年はふるえた声を振り絞ります。
「そうだよね……でも。本当に悲しいとき、寂しいとき、涙がでないのはつらいよね……」
自分より少し背の高い、少年の頭を少女は優しくなでます。
「泣かないでよ……泣きたいのは私なのに、どうしてあなたが泣くの?」
少女は諭すように言い、少年はそれに応えました。
「自分が本当の自分じゃない時が、一番つらいからだよ」
ふわり、風が少女の後ろ髪を通り抜け、木々がざわめきます。
どこからともなく、女性の声がひびきました。
『お行きなさい、茉莉花。この少年はあなたのために泣いてくれたのです』
「あ……」
少女に絡まっていた蔦が、光となって辺りに散ってゆきます。
『心優しい少年よ……この子をお願いしますね。人のために涙を流せる、優しい心を持てるように』
地面が揺れ、今まで楽園だった空間が割れました。そこから見えたのは眩いばかりの光と、どこまでも青く広がる空でした。
暑い日差しから守ってくれる木陰に、あたたかく包まれるような感じがしました。少年は土の上で目を覚ましたのです。
体を起こし辺りを見回すと、陰になっていたのはラクダで、ここは先ほどの砂漠の入り口という事がわかりました。
少年はラクダの方を見上げると、微笑んでいるような気がしました。
気を失っていた間、大きな白い翼に包まれていたような気がします。
「なんだか空を飛んでいたような気がするよ。君はすごいや」
そしてやはり首を垂れるラクダの頭をなで、ありがとうと言いました。
そうしていると声がします。
「おかえり」
懐かしい言葉が聞こえた先には、ライラが居ました。
「アンタはすごい事をしたのよ。やっぱり私が見込んだとおりだったわ」
何が何だか少年にはわかりませんでしたが、ライラの話を聞いてみることにします。
「砂漠からものすごく大きな湧水が現れたのよ、ここからも見えるくらい! そしたらアンタが飛んできて……」
「おにいちゃん、その方が困っているわ」
興奮気味のライラの後ろから、長い髪の女性がふらふらと現れます。
「ミカエラ! まだ寝てろって……」
そしてライラは少し咳
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