第一章 〜囚われの少女〜
夢の泉
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それからしばらく少年は、ライラという人物に付いて歩きました。少年の住んでいた町はすでにみえなくなっています。そして、砂漠の目の前で歩みを止めました。
「さぁ、これに乗ってちょうだい」
どうやらそれは動物のラクダのようです。しかし、そのラクダには不思議な特徴がありました。こぶがふたつあるラクダですが、前のこぶのほうから大きな2枚の葉っぱが生えていたのです。その一枚はラクダの頭の方に、もう一枚は背中の方に向かっています。そしてラクダの上に影を落としている事から、この葉っぱは日よけであることがうかがえました。こんな生き物がこの世にいたとは、少年は驚きました。
それからもう一つ。肩からは小さな翼のようなものが生えています。
空を飛ぶことのできるラクダなのかなあ? と少年が不思議そうに見ていると、ライラは言いました。
「それはね、太古のなごりなんだ。大昔、この子の祖先はもっと大きな翼で空を飛んでいたらしいわ」
その話は少年の想像を駆り立てました。長い年月を経るうちに退化と進化を繰り返し、今の姿を受け継いでいるのでしょう。
「そういえば」
そこでふと少年は思い出します。
「あの……さっきの小鳥は助かりますか?」
「ええ、もちろんよ♪ ……と、いってもここにいるんだけどね☆」
ライラはそう言うと、片手を差し出しました。その手の上にはおおきな水晶玉のようなものが乗せられています。小鳥はその中で眠っていました。
「わあ、すごい! ライラさんありがとう」
少年は驚きました。
「喜ぶのはまだ早いよ? 今はこの中の時間が止まっているだけなの……だ・か・ら!」
ライラは少年の体を持ち上げ、先程のラクダの背の上に放り投げました。
「うわわっ!?」
突然の事に何が何だかわかりませんでしたが、きづけばラクダの葉の陰の中に居ました。大きな青々とした葉っぱはとてもひんやりとしていて、そこそこ快適でした。
「これからアンタには、“夢の泉”と呼ばれる場所にいってもらうわ。そして、“女神の涙”を取ってきてちょうだい」
まだわからないことばかりでしたが、少年はそのまま話を聞きました。
「 “女神の涙”があればどんな病気も治るらしいわ。アタシはここに残ってアンタを待ってる。がんばってね」
ライラと少年はそこで別れました。少年が見えなくなるまで、祈るようにその人はその後ろ姿を見つめていたのでした。
――あの子は夢の泉に行ってくれるにちがいない。澄んだ目をした少年、頼むわよ。
――
それから少年は行くあてもわからず、ただじっと、暑さに耐え続けました。水筒を持たされてはいましたが、その水はぬるくなり、今はほとんど残っていませんでした。さらには空腹感が少年を襲います。水筒と一緒に渡されたのは干した果物でしたが、とう
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