第八章
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であった。
「はじまりがあるからには」
「では僕の今のこれは」
「悩まれるものではありません。ただその身を任せていればいいのです」
「そうなのですか」
「はい。これでおわかりでしょうか」
ここまで話したうえでの言葉だった。
「これで」
「はい、これで」
仙人のその言葉に頷く剛だった。その顔が晴れやかなものになっていた。
「わかりました」
「それではこれで宜しいですね」
「はい」
あらためて頷く彼だった。
「これで」
「では後はですね」
話が終わったところでハルジャもまた言葉を出してきた。
「これで帰りましょう」
「はい、それでは」
こうして仙人に別れの挨拶をして場を後にする二人であった。寺を出るとその門のところに牛がいた。インドの白い牛である。
牛を見るとだった。ふと気付いた彼である。
「ああ、あの牛は」
「ええ、門にいますよね」
「はい、牛はシヴァ神の乗り物ですから」
「悠久の中にあるのですね」
今はこのことを感じた彼だった。
「人と同じで」
「ありとあらゆる存在がです」
そうなっているというのである。
「ですからその中で漂っていればいいのです」
「悠久の時に身を任せてですね」
「はい、それでは」
「行かせてもらいます」
こう言ってであった。穏やかな顔で足を出した。彼は今はもう疲れを感じることはなかった。悠久の中に身を漂わせることを知ったからである。
悠久の仙人 完
2009・12・7
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