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戦争を知る世代
第二十話 反抗
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人は、抱き合うように見えた。きっと、そのクナイさえなければ、暖かい、感動的な風景だったのかもしれない。しかし、現実は、この降り続ける雨のように、冷たく、虚しく、悲しく、切ない光景だったのだ。二人から、小さな嗚咽に混じって、細い声が聞こえた。

「ごめんね・・・イナリ。大好き・・。」



ちょいと、戻る。
木ノ葉隠れの里 共同墓地
菜野ハナ


 お父さんは、嘘をついた。お母さんも、嘘をついた。皆、嘘をついた。“イナリを殺さない、ただ、話をするだけだ”って言っていたのに。
 最初は、“殺す”から連れて来いとは、言っていた。でも、私が頑なに断ると、彼らはこう言い直した。

「ハナちゃんには敵わないな。分かった、彼を殺すことは諦めよう。その代り、話はしたいから連れてきては、欲しい。それなら、構わないよね?」
信じられなかった。でも、その事に、お母さんも同意したの。お父さんが暴力を振るった時も、一族の人が家に押しかけて来た時も、どんな時でも、私を守ってくれたお母さんが。だから。「信じてもいいかな。」って思うようになったの。・・・ううん、違うかも。“そう、信じたかった”だけかも知れない。
 私はきっと、“家族”と“大切な人”を両天秤に架けたんだ。・・・そして、私は“大切な人”を切り捨てた。裏切った。

・・・私も、嘘をついた。

 それでも、私はイナリの事が捨てきれなかったんだと思う。大人数人がかりで、痛めつけられるイナリを見ていたら、いつの間にか、叫んでいた。

「イナリを・・・私の大切な人を、殺さないで!」
心の奥底からある、大切な気持ち。いつか、伝えたいな、そう思っていた気持ち。“私の大切な人”・・こそばゆくて、暖かい言葉。あぁ、イナリには、もっとムードがあって、二人きりの時に言いたかったなぁ。
 涙が止まらない。雨でびしょびしょの顔も、涙で濡れ、もはやどちらなのか分からない。視界も歪み、はっきりと彼らを捉える事は出来なかった。そんな時だった。歪む視界を、青く綺麗な光が射したのは。それは、大切なその人が、何度も私を助けてくれた光だった。

 ―でも、この光は違うモノ。私の知らない炎だった。降り続く雨の滴が、青い光を反射し、煌めくように見えたその空中を、赤い筋を細く描いて“人の腕”が飛んだ。

「ぎゃぁぁああああ!」
野太い悲鳴が響く。その声は、私のお父さんのものだ。左腕の先がなく、代わりに滝のように流れ出る血が、雨に混じり滴った。何が・・・起きたの?私が状況を把握する事が出来ない位の一瞬の間、イナリは青い炎に包まれながら、身を翻す。青い炎に包まれるクナイを、お父さんに止めを刺すように突き出した。それに、私の身体は、思考が追い付く事もなく、動いた。

「イナリ、ダメっ!」
そんな、声を上げながら。私
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