第二十話 反抗
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腹を襲い、また、数メートル飛んだ。そして、地面へと仰向けに落ちる。
「がはっ・・!」
込み上げてくるモノを抑えられずに、僕は吐いた。それは、どす黒い赤色をしている。口から溢れだし、零れていく。・・・思考が鈍る。何をしているのかさえ、分からなくなる。
それでも、考えなくてはいけない。でなければ、待っているのは“死”だ。
“菜野一族”の人達は、老若男女含めて20人はいるだろうか。攻撃に参加しないものもいるのだが・・・多勢に無勢だ。それに、皆、強い。僕なんかは、足元にも及ばない。
「イナリ君、君にはこれは理不尽に思えるかもしれない。しかし、それは間違いだ。これは、必然なんだよ。」
「ひ、必然・・・?」
痛みに耐えながらも、呟く。くそ、喉が焼けるように熱い。口の中が、鉄錆を嘗めているような味と、生臭い匂いで充満している。それだけで、もう一度吐きそうだ。
「そうだ。全ての原因は、君にある。君が悪いんだ。そう、君が“悪”だ!」
「何を・・?」
と言った瞬間、右頬に強烈な痛みを感じて、身体が左へと倒れ込む。それにまた、血を吐いた。
「何を・・だって?ふざけるのもいい加減にしろよ。俺達は、君の“一族”のせいで、こうなったんだ!俺達の功績は、過去の栄光に成り下がり、人々の目は、羨望の眼差しから家畜を見るような目に変わった。・・・・全て、お前らのせいだ!・・全て、お前のせいなんだ!」
「ごめんなさい。・・・僕は、何も知らないんです。一体、何が・・あったんですか?」
手の甲で、血を拭いながら問いかける。
「ふ、ふふふ。はははは!」
その笑いに、背筋が凍った。気味が悪く、違う意味で吐き気がする。
「甞めるなよ、糞ガキ。知らないってのはな、“罪”なんだよ。・・・恨むなら、君の親を恨め。」
そう言って、ハナのお父さんは、僕の首に手をかけて力を込めた。首が音を立てて引き締まり、呼吸が出来なくなる。その強い力に、身体は次第に地面を離れ、宙に浮く形となった。足が地面に着かない事もあり、踏ん張る事も出来ず、ただ、苦しくなるのを我慢するしかなかった。意識が遠のいていく。視界が滲む。
「お父さん!辞めて!イナリが死んじゃうっ!」
聞きなれた声が聞こえた。しかし、その声は、悲しみを含んでいる。
「・・ハナ、これも“一族”の為なんだよ。分かってくれるだろう?」
「分かんないよっ!イナリを殺したりしないって言ってたじゃない!少し、話を聞くだけだって。だから・・だから、連れて来たのに!・・・辞めて!イナリを離して!」
悲鳴が聞こえる・・・。重い瞼を何とか開けて、声のする方へと視線を向ける。滲む視界の中で、それだけははっきりと見えた。ハナが、泣いている。その綺麗な眼に、大粒の涙を蓄えて、雨なのか、涙なのか分からない程
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