第三章
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第三章
「それで行って来ます」
「ああ、楽しんで来いよ」
こんな話をしてからインドに旅立つ彼だった。インドに辿り着くとまずは褐色の肌の品のあるガイドさんに迎えられたのだった。
「ハルジャといいます」
「そうですか」
「はい、宜しく御願いします」
笑顔で応える彼だった。既に服はインドの気候に合わせて半袖でラフな格好である。見ればそのガイドのハルジャもそんな姿であった。
「それでは」
「まずは何を食べますか?」
「カレー、いえカリーでしたね」
「はい、カリーです」
ハルジャは微笑んで彼の今の言葉に頷いた。インドではそう呼ぶのである。
「カリーを食べますか」
「それで御願いします」
「日本人らしいですね」
ハルジャは彼がカリーを頼むとにこりとなった。
「まずカリーを頼まれるとは」
「そうなのですか」
「御存知だと思いますがインドでは料理はどれもカリーです」
これはよく言われていることである。その味付け自体をカリーと呼んでいるのである。
「ですからこの場合は」
「お米にかけたカリーですね」
「そうです」
まさにそれだというのである。
「ではそれを」
「はい、それでは」
こうしてまずはそのカリーを食べる彼等であった。店はそれなりに洒落た落ち着いた趣の店だった。インドというよりはイギリスの感じだった。
その白くカーテンまで西洋風で緑の庭まで見える店の中に入って。剛は少し戸惑いながらハルジャに対して尋ねるのだった。
「あのですね」
「何か?」
「高級そうなお店ですね」
「値段は大したことありませんよ」
しかしハルジャはにこりと笑ってこう彼に返すのだった。
「別に」
「そうなのですか」
「はい、値段はです」
大したことはないというのだった。
「ただ」
「ただ?」
「このお店にしたのはですね」
そのことについて話をはじめてきた。
「私の方の都合でなんですよ」
「ハルジャさんのですか」
「ええ。私はヒンズー教徒でして」
そのイギリス風の白いテーブルかけの席に向かい合って座る。そのうえでナプキン等が用意されるのを見ながら話を続けるのだった。
「それでカーストの関係で」
「カーストですか」
「はい、それです」
それだというのだった。
「その関係で。貴方には申し訳ありませんが」
「いえ、僕のことはいいですけれどね」
実際にそれはどうでもよかった。ただそのカーストの話が気になった。それであらためて彼に対してそのことを尋ねたのであった。
「ただ」
「ただ?」
「お店にも関係してくるんですね」
「はい、そうなんです」
返答はその通りだというのものだった。
「これが複雑なものがありまして」
「カーストがですか」
「他にも色々とあります」
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