十四章 幕間劇
一真の落し物
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・・・・はいっ」
双葉は微笑んでくれたけど、まだどこか元気がないのが分かるな。何か双葉にプレゼントすれば元気になるのかなと思いながら、猿回しが終わったので行くことにした。相変わらず一葉に引きずらされているけど、向かったのは市の中央部である。
「旦那様・・・」
「どうかした?」
「ここが、小谷の市なのですか?」
「そうだよ、驚いたかい?」
「はい・・・・」
まあ、京みたいな活気がある市は見たことないのであろうな。
「このように賑やかな市、初めて見ました」
「ふむ。堺はこれよりもっと賑やかだったよ」
「ここよりもですか?」
「うむ。戦いが落ち着いたら行くことがあるかもしれん。その時は双葉も連れて行こう」
「連れて行って下さるのですか?」
「天下が平和になったらな。それにやりたい事があるのなら今、叶えたほうがいいぞ」
「やりたい事・・・・」
「双葉は何かやりたい事でもあるのでは?」
「やりたい事ではなくて、やらなくてはならない事でもいいのでしょうか?」
「それはなおさらだ。今の内にやっておかないと、後で後悔することになる」
やらなくてならない事。いや、言わなくてはいけない事。で、勇気を出して言おうとした瞬間に一葉に引っ張られる。やがて、一葉が足を止めたのは小物屋だった。どうやら、京からの物らしい。店主と話している一葉をほっといて一真は小物を真剣に見ている。双葉から見れば久遠や結菜へのお土産なのだろうと思ったらしいが。恋人は、一葉や双葉だけではない。
「双葉は何か欲しいのある?」
「い、いえ・・・・別に・・・・」
反射的に答えたあと後悔してしまう双葉。一真に買ってもらうのに、あっさりと断ったので気を悪くしたのではないかと思っていた。
「そうか。欲しいのあったら言ってくれ」
一真はそう微笑んでいたが、内心は双葉をどう思っているか。心の中で何度も謝罪していたが、一葉が次に行くためにこの店をあとにする。それからしばらくして、俺たちは腰を下ろしていた。市の外れにあるお茶屋だった。
「親父さん。お団子、三人分ちょうだい」
「はいよ」
「おや、おごってくれるのか?」
店主に三人分の金を払うと、一葉はそう言ってくすくすと笑う。
「今日は一葉に助けてもいないしな」
京みたいに絡んでくる連中はいない。さすが浅井家のお膝元だけのことはある。見た感じは、コソ泥やスリはいないし。近江の兵は荒っぽいって聞いたが、少なくとも街に関しては荒々しい雰囲気はなかった。俺も一葉もよく歩いているが、双葉は大丈夫であろうか。こんなに歩いたことはないと思うし。
「一真様。団子が来たぞ」
「お、おう」
双葉が最後の団子を
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