十四章 幕間劇
一真の落し物
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「・・・・・・・はいっ」
双葉は少し考えていたけれど、寂しそうな表情で頷いてくれた。
「二回目だが、小谷の街だな」
市に脱走じゃなくて、外出の手筈を付けてもらって、俺達三人は小谷の城下に行っていた。
「ふわ・・・・賑やかな所なのですね」
双葉の言う通り、小谷の城下は人通りも多くて、活気に満ちた場所だった。京みたいに圧倒的な歴史のある町並みは少ないが、そのぶん若くて元気がある感じだ。眞琴や市が頑張っている証拠だな。
「一真は小谷は初めてか?」
「さっき言った通り二回目だよ。道案内なら出来ると思うぞ」
何せ、この前来た時に小谷の街ならマップは完成していたけど。現代みたいにすぐ変更しなければというのはないだろうし。
「おお、案内役として連れてきて、よかったぞ」
「この先をまっすぐ行くと市があるから、言ってみようよ」
「ふむ・・・・そうだな」
「双葉。行くよ」
「あ・・・・・・っ」
俺が手を繋ぐと、双葉は小さく声をあげる。
「人通りが多い。はぐれないように注意しろ」
「・・・・・はいっ」
繋いだ手を、握り返してきた。一葉は、好きに動いてどこかに行っちゃいそうだから握った。両手に花というのだけど。でも一葉と手を繋いだのは、少し後悔した。
「見よ、一真様!あちらじゃ、あちら!」
「強くひっぱるなっつうの」
「お、お姉様・・・・っ」
糸の切れた凧は制御不能になるというが、もしかしてこういうことなのだろうか。俺としっかりと手を繋いであるから引き回されるのに苦労した。
「ほほぅ。猿回しか」
どうやら制御不能になった凧は、猿回し芸にお気に召したらしい。楽しそうに見ていて、俺は息を吐く。
「双葉、疲れた?」
「いえ・・・・・大丈夫、です」
そういう割には元気がないな。外出は慣れてない双葉だからしょうがないが、何かを隠しているのは分かるな。
「出かけるなら伊吹山の方がよかったかな?」
「覚えてくださったのですか?」
「確か、この辺りにある山というのは覚えている」
この前見てみたいという山が、この辺りにあるのは覚えている。が、俺はどの山が伊吹山なのかは知らん。
「はい。小谷に来るときに、幽に教えてもらいました」
「本当はそこまで行けたらいいのにな」
俺は空を飛べるから行けることは可能だけど。また、一葉や幽に勘違いされると面倒だし。
「いえ、間近で見られただけで十分です」
「そうだ。越前の件が片付いたらまたここに来ると思うから、今度は一緒に行こうな。もちろん空を飛んで」
小谷から美濃に戻るか京に戻るかは久遠次第だし。まあ、俺と黒鮫隊の者で行けば問題ないだろう。
「・・
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