十四章 幕間劇
麦穂の気持ち
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みるみる真っ赤になっていく麦穂の顔。
「お腹、減っているんだろ?」
「あ、あのっ、これはっ・・・・ですねっ!」
「遠慮するな、麦穂」
慌ててる麦穂の背後からすっと手を伸びる。
「み、壬月様っ!?」
麦穂の動きを封じ込むように壬月が麦穂の両肩を掴む。
「一緒にご馳走になろうじゃないか、一真様に。私も腹がぺこぺこだ」
「で、でしたら、壬月様だけが召し上がっていらしたらよろしいじゃないですか!」
「はっはっは。あれだけ派手に腹を鳴らしておいて、よく言う」
「ななっ・・・・あ、あれはっ!」
「ほら、行くぞ!」
「ちょ、ちょっと放して。壬月様っ、痛いです!」
と言って、行ってしまうので追いかけた。そして、料理はすでに作ってあったので目の前に置いたけどな。
「どうだ、一真様の手料理だぞ。実は私も少しは手伝ったんだがな」
「・・・・・・・」
壬月は上機嫌で次々と料理を口に運んで行く。対して麦穂は、俺と料理を交互に見ながらまだ機嫌が悪く見える。
「戦の前だというのに、このように豪勢な料理を作ったりなどして、兵糧事情も考えて頂きたいです」
「作った料理の材料は全部船から持ってきた物だから、心配はいらないよ。兵糧は一切触れてないし」
「それに使ったとしてもたかが三人分の料理に目くじらを立てることもあるまい」
「心がけの問題です。上に立つ立場の者がこんな贅沢をしていたら、兵にしめしがつきません」
麦穂の言い分も分かるが、これは俺達ならこんなのは当たり前。贅沢ならもっと高い材料を使っているが。
「麦穂よ。材料の山菜はこの辺りで採ってきたものだから」
「もぐもぐ、私も手伝ったんだぞ」
「材料に元手がかかっていないのは分かりましたが、料理は豪勢に見えます」
まだ食い下がるな、麦穂の奴は。
「パッと見は豪勢に見えるが、そこまで手はかかっていない」
といって、今回作ったのを説明して行く。最初は仏頂面だった麦穂ではあったが、山菜好きは本当のようで、次第に興味を持って聞いてくれたけど。
「ところで、これは一体なんですか?」
レシピに耳を傾けた麦穂が指を差したのは、山菜の天ぷらだった。
「ああ、これは天ぷらという。小麦粉と卵で作った衣をつけてから、油で揚げる料理だ。そのつゆをつけて食べてみて」
俺は一瞬考えたが、言う事にした。天ぷらはこの時代にはないはずだけど、まあいいか。
「なるほど・・・・」
興味津々で、山菜の天ぷらを箸で取る麦穂。
「もぐ、美味いぞ、こいつは!ついつい酒が欲しくなる」
「どうぞ」
「・・・・ぱく」
おそるおそるだが、天ぷらを口に運ぶ麦穂。そして食べ
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