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IS<インフィニット・ストラトス> ―偽りの空―
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第三十九話 それぞれの日常
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させられたのだが、その中で一夏が彼女の水着を褒めたのだ。当然彼女はその水着を購入して、今も大事そうに抱えている。

 だがしかし一夏が自主的にそんな気の利いたことができるはずもなく、反応が芳しくなかった彼に対して紫苑が少し呆れながらも諫言したというのが真相だ。実際、褒められたのは箒だけでなく全員が何らかの言葉を一夏から貰っているのだが、彼女の意識からは除外されているようだ。

 そして表には出せないながらも箒が幸せな気分に浸っているうちにいつの間にか場は解散となり、一夏も既にその場を立ち去ってしまっていた。
 買い物を続けるというセシリア達に誘われもしたのだが、先ほどまでの幸福な気分も冷めてしまったためそれは断り、彼女は一人帰ることにした。

 それゆえの溜息である。本来であれば二人きりのはずだった買い物。少し褒められただけで浮かれてしまって、そのあと一夏とまともに話すことすらできなかった。
 それどころか、思い起こせば途中から一夏が自分が苦手な相手のことをチラチラ見ていた気さえする。

 自分にも専用機があれば。

 それが彼女がこの数ヶ月で思い続けてきたことだ。

 今回集まったメンバーの中で、彼女だけが専用機を持たない。
 一夏達はそんなこと全く気にせずに接しているし、箒もそれを理解して嬉しくもあるのだが、やはりそれだけではどうしようもないコンプレックスを持ってしまうのは仕方の無いことだった。

「あと、あと少しで」

 そんな彼女に訪れた、ISの開発者で姉でもある束からの、箒の専用機があるという一報。
 彼女はそれに食い付き、今はただひたすらその日を待ち望む。

 家族を崩壊させる原因となり嫌い、憎んですらいたはずの人間に今では希望を見いだしているという矛盾に気付かずに……。

 自覚なしに持った強い力は、時としてその持ち主を傷つける。それを彼女は未だ知らない。
 


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