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第三十九話 それぞれの日常
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いうのも、一夏と二人で女に絡まれるという騒動に巻き込まれてから少し様子がおかしかったからだ。
「あれが今の社会の縮図なんですよ」
いま、二人はモール内のベンチに座っている。
少しうつむき加減のシャルに対して、紫苑は諭すように声をかける。
「……今まで、全然知りませんでした。いえ、知ろうともしませんでした。でも性別や立場が違うだけでこんなに世界が変わってしまうんですね」
もともとシャルは男性として扱われてきたわけではない。愛人の子として秘匿されていたのをいいことに、織斑一夏の出現に合わせて息子として発表し利用されたに過ぎない。
だから彼女は、今の世の中で男性がいかに不利な立場に追いやられているかをこのとき初めて目の当たりにしたのだ。
「彼女達はどうなるんですか?」
「あなたが証言すれば懲役にもできるかもしれませんね」
他国の代表候補生に不当に絡んだとはいえ、相当に重い罰。しかし、それがまかり通るほどにIS操縦者というのは特殊な存在なのだ。
「……いえ、それをしたら僕も彼女達と同じになってしまいますし望みません。そして、あなたが一夏に言ったように僕も力をつけます。せっかく今、男としてISを操縦できるんです……せめてあなたに代わって」
シャルは、あのときの紫苑の言葉から激しい憤りを感じ取っていた。彼が男であるがためにどれだけ酷い扱いを受けてきたのか、ましてや紫音という存在がそれをさらに複雑にしている。それを少なからずシャルは垣間見たのだ。
「ふふ、あなたらならそう言うと思っていました。大丈夫ですよ、おそらく学園にも連絡がいくでしょうが、千冬さんに予め便宜を図るように伝えておきましたから。それと……ありがとうございます」
紫苑はシャルの言葉に少し驚いた様子を見せるが、すぐに嬉しそうな表情に変わった。シャルがあの女性達に厳罰を望みはしないだろうとは彼も思っていた。だがまさか彼女が、一夏と話していたようなことまで決意するとは思いも寄らなかったからだ。
それと同時に紫苑は、その決意の裏にある優しさを感じることができて嬉しくなった。彼のこの立場を多少なりとも自分のことのように感じることができるのは、目の前の少女をおいて他にはいないのだから。
ところで、今彼らは二人きりなのに口調が戻っていないのはただ単に外だからという理由だけではない。二人をこっそりつけている三つの気配に気付いていたからである。
「お、お姉様……まさかシャルルさんと……! 確かに彼はいい方だと思いますし、それに万が一、一夏さんをお姉様と取り合うことを考えれば……いいえ、それでもやっぱり!」
「ちょっとセシリア、静かにしなさいよ、気付かれちゃうでしょ!」
「……はぁ、二人ともうるさい」
言わず
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