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万華鏡
第七十四話 冬化粧その九

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「お昼はおうどんよ」
「あっ、おうどんなの」
「それかよ」
「力うどんにするわよ」
 餅を入れたそれをだというのだ。
「それでいいわね」
「ああ、冬だから」
「それでなんだな」
「冬はおうどんよ、それにね」
 それに加えてというのだ。
「お餅もあれば完璧でしょ」
「そういえばお母さんお餅好きよね」
「正月もいつも食べてるしな」
「美味しいからよ」
 だからだと答える母だった、明るい顔で。
「もうお湯は用意してるから」
「後はお湯をまた沸かしておうどんを茹でで」
「おつゆ作るだけか」
「それでお餅も焼いて」
「おうどんの上に乗せてか」
「じゃあ今から作るからね」
 早速、というのだ。
「あんた達は待っていてね」
「わかったわ、それじゃあね」
 琴乃はもう酒を飲み終えている、その赤くなっている顔で母に答えた。
「その間私お部屋にいるから」
「琴乃ちゃんお酒臭いわよ」
 母は部屋に戻ると言う娘に笑ってこう言った。
「もう一升空けたのね」
「これ以上は飲まないわ」
「そうしなさい、飲み過ぎは本当に身体によくないからね」
「ええ、今日はこれでね」
「お風呂はまた入ってもいいから」
「そっちはいいの?」
「どうせ暇でしょ」
 外に出られず学校に行くことも出来なければ遊びに行くことも出来ない。そうした状況では、というのである。
「だからね」
「それじゃあね」
「もうちょっとお酒抜けてからね」
「お昼食べて」
「お水も飲んでね」
 そうして今よりも酒を抜いてというのだ。
「それからね」
「わかったわ、じゃあね」
「飲み過ぎてお風呂に入ったら危ないからね」
「そうよね、やっぱり」
「身体によくないから」
 特に心臓にだ、サウナはとりわけ危ない。
「わかったわね」
「わかったわ、それじゃあお昼食べてからね」
「また入るといいわ、じゃあね」
「それじゃあおうどんね」
「食べましょう、今から作るから」
 こう言ってだ、そしてだった。
 母はうどんを作りはじめた、そうして琴乃は暫く部屋にいてゲームをしてそれから昼食が出来たところで食べた。
 そのうえでだ、水も飲んでからだった。
 また風呂に入った、その時母は自分の夫と共に酒を飲んでいた。そうしながら娘にこう言ったのだった。
「たまにはこんな日もいいと思うかしら」
「あまり」
 首を傾げさせて答えた娘だった。
「何か閉じ込められてる感じだから」
「琴乃ちゃん雪国では暮らせなさそうね」
「やっぱりお外に出ないとね」
 活動的な琴乃らしい言葉だった。
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