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一輪の花
第四章
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第四章

「そこで取って来たんじゃ」
「そこにか」
「そこにじゃな」
「そうじゃ。そこにあったんじゃ」
「そうか、そこか」
「そこなんじゃな」
 二人は女の子の言葉に強く頷いた。そうしてだった。
「おいお嬢ちゃん、これはサービスじゃ」
「ただじゃ」
 こう言って一番新しい靴を出してきて女の子に手渡した。
「受け取ってくれ」
「わし等の感謝の気持ちじゃ」
「感謝って何じゃ?」
 そう言われても女の子にはわからない話であった。それで二人の言葉を聞いてもきょとんとなっていたのである。目をぱちくりとさせている。
 しかしである。二人にとっては大きなことだった。それで言うのだった。
 女の子にその靴を握らせてだ。それでだ。
「ちょっと店の番は頼むけえ」
「すぐに戻って来るわ」
「えっ、何処行くんじゃ」
 はじめて会った女の子にこんなことも言うのだった。女の子にとってはこれまた何が何なのかわからない話だ。今度は呆然となっていた。
「川辺じゃ」
「じゃあ頼むわ」
 こう言ってすぐに川辺に駆けて行った。そこに行くとだ。
「ああ、ほんまじゃ」
「ほんまにあるわ」 
 川辺の端にクローバーが咲いていたのだ。しっかりとだ。
 そしてその中には一つだけだが花も咲いていた。クローバーの小さな赤い花がだ。その小さなものが集まった花が咲いていたのだ。
「おい、花もじゃ」
「そうじゃな」
 優二は優一のその言葉に笑顔で頷いた。
「あるのう、確かに」
「花も咲いてるんじゃな」
「これまでなかったのにな」
 二人の顔に自然と笑みが漂っていた。嬉しくて仕方ないのである。
 そうしてだ。その花を見て二人で話す。
「ピカは落ちたがそれでもじゃ」
「こうして草木も戻って来るんじゃな」
「ああ、何もかも何があっても元に戻るじゃ」
 二人は今そのことがわかったのである。
「広島もこれからまた昔みたいに賑やかになれるな」
「兄貴、昔どころじゃないけえ」
 優二はここで笑って兄に告げた。
「昔よりもっとじゃ」
「もっとか」
「そうじゃ。もっと賑やかになるんじゃ」
 そうなるというのである。
「絶対にな」
「そうか。そうじゃな」
「これからな」
 二人でその花とクローバーを見ながら話すのだった。
 そしてだ。今度は優一の方から言ってきた。
「ほなこれからじゃ」
「これから?何じゃ?」
「戻るか」
 こう言ってきたのである。
「これからな。店に戻るか」
「ああ、そうじゃな」
 店のことはすっかり忘れてしまっていた優二だった。クローバーのことに頭がいってしまってである。
「それじゃ戻るか」
「ああ、戻ってまた商売じゃ」
 優一はまた言った。
「女の子待たしとるしな」
「そうじゃな。すぐに
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