暁 〜小説投稿サイト〜
リリカルなのは〜優しき狂王〜
2ndA‘s編
第七話〜悲しい怒り〜
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行動に咄嗟に反応できなかった。
 こもる様な乾いた音が鳴る。
 その光景を一番理解していたのは、それを少し離れた位置で見ることとなったなのは、フェイト、アルフの三人である。しかし、見たことを認識していても、それを理解し納得するほどのものを得られていなかった三人は呆然としていたが。
 音がなって数秒後、リンディは自分の頬に熱さと痛みを感じ始め、そこで初めて自分が叩かれたことに気付く。頭の冷静な部分が『くぐもった音なのは、包帯をしていたから?』と言う、どうでもいい疑問は浮かぶが自分が何故叩かれたのかは、今の彼女には分からなかった。

「な、何を―――」

「貴女は一体何がしたいんだ!!」

 振り抜かれた手と、前後の状況から自分がライに叩かれたことをようやく頭が正しく理解した。そして、その張本人に問い質そうと声を吐き出そうとした瞬間に、彼女の声はそれを上回る怒声に塗りつぶされた。

「貴女の過去も抱えるものも理解した。しかし、それでどうして貴女はそんな馬鹿な行動をとった?!」

 感情が溢れる。
 頭の芯がぼやける程に熱を持っている。
 歯止めの効かなくなった思考をしかし、ライは止める事なく吐き出す。

「もし僕があの場にいなければ貴女が死んでしまったかもしれない――――そんな傲慢なことを言うつもりはない。だけど、少なくとも怪我の一つもしていたかもしれない。その時悲しむ人間のことを貴女は考えているのか?!」

 ライは内心で自分を絞め殺したくなる。
 自分が知ったような口を聞いていることにイライラする。
 だが、それを許せなく感じる自分に胸を張って誇れることはできる。

「貴女は残されることの苦しみを知っている。なのに、どうして今度は残す側に回ろうとすることを良しとした?!」

 ライの言葉が放たれるたびにリンディの肩は震える。
 そんな彼女にお構いなしに言葉は続く。ライはライの怒声にビクついているフェイトに一瞥してから口を開く。

「彼女は貴女の子供になることを愛おしむように、本当に大切そうに僕に言ってくれた。そんな家族に対して貴女は『仕事と私怨を優先します』と言ったんだぞ!」

 リンディは目を見開き、フェイトを見つめる。そこに浮かんだのは後悔か、それとも驚愕か。

「過去の家族を忘れろとは言わない。だけど今の家族を蔑ろにするのは、母親としてやっちゃいけないことだろ」

 最後は怒声ではなく、掠れるような、絞り出すような弱々しい声しか出なかった。
 気持ちが先走り、自分の言いたいことを告げれたのかどうかも、ライは認識できていなかったが、そこで言葉を切り自分の顔を見られないように俯きながら、リビングから出ていこうとする。

「……僕はそちらの邪魔はしませんよ。それは確約します」

 
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