2ndA‘s編
第七話〜悲しい怒り〜
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ータを投影した。
空中に身分証としての管理局の局員としてライの個人データが映し出される。
局員としてのデータを持っていることに一瞬驚きを見せるリンディであったが、そのデータに目を通すことで浮かべた表情は納得ではなく、懐疑である。
「ふざけているのかしら?こんな穴だらけのデータで」
彼女の言葉通り、ライが映し出したデータには名前と年齢ぐらいしか明記されておらず、それ以外の所属や階級、出身世界、更には顔写真すら『NO DATA』としか載っていない。
こんなデータを見せられて、身元を納得する要素にはなり得なかったが、納得せざるを得ない義務を彼女は持っていた。
「それ、正式な書類ですよ?管理局からの押印もされている」
そうなのだ。
ライの言った通り、その書類の横に立体的にも平面的にも見える模様が浮かんでおり、それこそが管理局が使用している許可印である。
個人では到底偽造などできないそれは、リンディ・ハラオウンと言う局員を納得させる要素としては十分であった。
しかし、実はこの書類はライが元の次元世界で手に入れた、ある高官の権限のデータを使用し偽造したものであるのだ。だが、正式な手続きを踏んだ偽造書類と言う何とも奇妙なものでもあるのだから、その事実を知っているライと蒼月は内心で苦笑いを洩らす。
「っ……」
書類上では正式な局員であったライと蒼月が、内心で『なんだかな〜』とか考えている時、リンディは歯噛みしていた。
彼女は彼が闇の書について何か情報を持っていると考え、そして生身でヴォルケンリッターを振り切り、更にリンカーコア所有という魔導師としての素養も持ち合わせた彼を今手放したくはないと思っていたのだ。
「……私たちは今、ある事件を担当しようとしています。管理局員としての貴方に協力を頼めないかしら?」
「無理だな。公になる事件に関われば、僕という存在が明るみに出る可能性がある。それは管理局にとっても都合が悪い」
敢えて、管理局という言葉を使ってきた相手に同じく、管理局という理由をつけて言い返す。子供の言い合いにも感じるそのやり取りに辟易しながらもリンディは頭を働かせていた。
(…………辟易しているのは自分の不甲斐なさというよりは、目の前の彼を言いくるめることができないことかしらね)
言ってしまえば、彼女は自分の思い通りに事が運ばないことに拗ねているだけに近い。そして、そうせざるを得なかったライの言い回しにも腹を立てている彼女であった。
ライが最後に言った『管理局にとって都合が悪い』というのは、個人が公になることで彼が関わってきた管理局の都合の悪い部分が表沙汰になるのが不味いということだ。
それはつまり、管理局にも組織としての裏があり、汚れ仕事を行っていると言う
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