2ndA‘s編
第七話〜悲しい怒り〜
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海鳴市・ハラオウン家
海鳴市の一角にある少し大きめのマンション。
そこのハラオウンと言う表札が掛かる一室のリビングで、その部屋の所有者であるリンディ・ハラオウンはソファーに座っていた。
腕を組み、目を瞑る彼女は既に残り数時間となった今日この日のことを頭の中で回想し、整理していた。
その中で、特に印象に残り何度も思い出すのが、ヴォルケンリッターと対峙してからのことである。
最初は亡き夫との因縁を清算するつもりで赴いた。そして例えどんな結末になろうと彼らに挑もうとし、その戦端は開かれたと思われた。
だが、そこに待っていたのは第三者の介入。
突然現れた一般人に見える青年がリンディを庇うように介入し、ヴォルケンリッターからの逃亡の際に一度気を失い、次に目が覚めた時にはその青年の背の上であった。
(あの人のことに気を取られすぎたのかしら……抱えられるまで彼の存在に気付かないなんて)
彼女は当時のことを思い出してそんなことを思う。しかしライ自身が隠密行動に長け、気配を殺していたために彼女が気付かないのも無理はなかった。
彼女は気配を察せなかったのではなく、彼が気配を察知させなかったのだから。
そんな彼女は自分の亡き夫のことを思い出して、少し顔が朱に染まる。
(これは気の迷い。ええ、それ以外の何物でもないわ)
自分に彼女は言い聞かせるように、その考えを反復していく。
彼女は気絶する直前まで夫のことを考えていた。そのことが原因なのか、気絶から目覚めたあとに男性に背負われていた事と、久しく嗅いでいなかった男の香りを嗅いだせいか、その青年に夫を重ねてしまったのだ。
意識しないようにその事を忘れようと、目を瞑ったまま首を振るが、その行動自体が既に彼を意識していることに今の彼女が気付くことはなかった。
「嫌な女ね……」
自嘲気味に呟いたその言葉は、清潔感を纏ったリビングに染み込むように消えていく。
それがどこか虚しく感じながらも、彼女はリビングの入口の方に視線を向けるのであった。
ハラオウン家・一室
リンディがリビングで思考に耽っている間、ライはこの世界のなのは、フェイト、アルフの三人と一緒にいた。
本来であればリビングで事情聴取が行われるのだが、その前にライの治療を優先した結果である。
最初は軽傷を負うような事もなく、あの場が終息したと思っていた一同であったのだが、マンションに到着して早々に一悶着が起こった。
それはここに来るまで、コートのポケットに手を入れていたライであったのだが、玄関で靴を脱ぐ際にポケットから手を出した時に、その手のひらをその場の一同に見られてしまう。
ライの右手は手のひら全体が火傷を負い、そして手の中央に一直線の
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