暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
蒼き魔女の迷宮篇
19.始まりの予兆
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もん」

 そう言って美鈴は、先ほどまで座っていた席のほうを指差す。
 そこには、それぞれ電話に出ており、忙しそうにしている。

「ちょっと用事ができた、じゃあな」

 愛用のヘッドフォンを掴んで矢瀬は店を飛び出す。

「待てコラ! ちゃんと喰ったぶんは払ってけよオイ!?」

「ふははははは!」

「ふはははは、じゃねえ!」

 高笑いを残して矢瀬は店内を後にする。

「ゴメン、古城、彩斗。あたしもバイトが急にはいちゃったから抜けさせてもらうわ」

 ポテトを口に含んで浅葱も矢瀬同様に店内から出て行く。




 絃神島のド真ん中。キーストーンゲート最上部の展望ホールに場所を移していた。

「うわ、絶景だね!」

 ガラス張りの床の上に物怖じせず飛び出して、凪沙が声を上げる。
 ドーナツ型の広間は、直径十メートルほどの大きさ。壁や床の大部分がガラス張りといこともあって、ここから絃神市内のほぼ全域が見渡せる。床全体がゆっくりと回転しているので、立っているだけで三六〇度すべての風景を見ることができる。

「大丈夫か、唯?」

「べ、別にこ、怖くないよ。た、ただちょっと……」

 展望台の真ん中に備え付けられているベンチに唯と彩斗は座っていた。
 高所恐怖症なのに唯はみんなに悪いからとついてきたのだ。
 こういうとこだけみれば、普通に可愛い愛すべき妹になるのだがな。
 唯が怯えている一方で彩斗の母親はというと優麻や凪沙たちと一緒にはしゃいでいるという意味不明な状況だ。
 本当にあれが自分の母親なのかと疑いたくなってくる。
 彩斗は、妹の手を握りながらこの状況に少しばかり違和感を感じるのだった。
 浅葱と矢瀬が突然に用事があるといって去ったことも気になる。
 それよりも気になるのは、絃神島にさっきから感じる異様な感覚。言葉にすることは出来ないが異様な感覚だということはわかる。

「どうしたの、彩斗君?」

 絃神島の風景を楽しみ終わったのか友妃が彩斗たちが座るベンチへと歩み寄ってくる。

「い、いや、おまえはなにも感じないのか?」

「感じるって、なにを?」

 獅子王機関の“剣帝”でさえも感じないってことは、彩斗の勘違いと思ったほうがいいだろう。
 するとエレベーター付近で軽い騒ぎが起きている気配がした。
 唯を友妃に任せ、立ち上がるとそこには、場違いなメイド服の少女がいた。藍色の髪に、淡い水色の瞳。人形めいた無機質な美貌。こちらの存在に気づいた人工生命体(ホムンクルス)の少女がいつもの口調で呟く。

「捜索対象を目視にて確認」

「ア……アスタルテ?」

 古城が呆然と彼女の名を呼ぶ。
 彼女が来たのがただ事ではないと感じた彩斗は、早足
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