高校2年
第四十七話 けじめをつけろ
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第四十七話
『水面海洋、4年ぶり東豊緑V』
この秋は、決して楽な戦いでは無かった。水面地区の準決勝で三龍に1-6の完敗を喫し、地区順位は昨年秋に続く3位。前世代のチームは甲子園に届かず引退を迎え、この秋からの新チームこそはと意気込んでいた高地監督は思わぬ敗戦に「嫌な予感がした」と言う。しかし、州大会では次々と接戦を勝ち上がり、準決勝では水面1位の水面商学館に3-2、決勝では勢いに乗る木瑠1位の南海学園に延長11回5-4。4年ぶり東豊緑州制覇と同時に、来春の選抜甲子園出場が確実になった。
チームの柱は経験豊富なセンターライン。エース・城ヶ島直亮(2年)は州大会全4試合36回を投げ抜き防御率2点台前半と粘りの投球を披露。捕手で主将・川道悠介(2年)、旧チームからの4番ショート江藤良三(2年)を中心にした打線は、「ホームランが出るあまり、粗くなっていた」(川道談)地区大会とは一転、丁寧な攻めで確実に得点を奪った。「まだまだ、三龍さんにも負けましたし、商学館さんもエースを投げさせませんでしたし、水面の中でも強いとはいえないです。」と高地監督は言う。「だから、まずは選抜で商学館さんに勝って、夏の水面で優勝して、それで初めて復活と言えます。」とライバル校への宣戦布告、そして選抜甲子園での活躍を誓った。
「結局、商学館も海洋も選抜決まりかよ」
「俺らだけ綺麗にハブられたな」
クラブハウスで飾磨がスポーツ新聞を広げ、宮園がため息を突いた。水面地区では、海洋には勝ったし商学館にも一点差の惜敗。しかし、結末には大きな差がついた。
「あー、海洋が神宮枠とってきてくれんかなー」
「例え神宮枠が東豊緑に来ても、水面から三つは出場できないからな。俺たちが選抜に行けない事だけは確定したよ。」
宮園はもう諦めている。いや、吹っ切っている。
「夏に出れば良いさ。」
そう言って、グランドに出て行った。
ーーーーーーーーーーーーーー
冬のトレーニング。翼にとってはこれが2回目となるが、この冬は昨年の冬よりも“熱い”。
甲子園まであと一歩まで迫った秋。その“あと一歩”を踏み出す為の精力的な練習が続く。
ベンチのホワイトボードには大きく
「君の君を越えてゆけ!」
と書いてある。
冬は、個人の力量を伸ばす時期である。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
パシィ
「……あー」
「曲がってないぞ」
ブルペンで翼が顔をしかめ、宮園が仏頂面で球の軌道を批評した。
「何だって、新しく覚える変化球が、スクリューなんて投げにくい球なんだよ。スライダーとかカットボールとか、他にも色々あるだろ。」
「いや、それはさぁ……」
翼は、新球の開発に取り組んでいた。
夏の大会前は、
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ