暁 〜小説投稿サイト〜
打球は快音響かせて
高校2年
第四十七話 けじめをつけろ
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れるって思っとったんやけど……」
「…………」

分かってたのなら、別に俺にこだわらなきゃ良かったのに。やっぱりバカだなこいつ。俺以外に男なんていくらでも居るだろうに。
宮園は青野の言葉をよそ見しながら聞いていた。
冬が近い。虫の鳴き声がした。その鳴き声に、グスンと鼻を啜る音がして、宮園は青野の顔をちゃんと見た。

宮園はハッとした。
青野は笑っていたのである。

「あたしこそ面倒臭くてごめんね。……もう関わんないから。」

青野はそう言って踵を返した。
宮園はその場に立ち尽くして、その小さい背中を見送った。実にあっさり別れ話は成立した。
良すぎるくらい青野の物分りは良かった。
ギャンギャン泣かれて、詰られてすがられるだろうという、宮園の予想は大いに裏切られ、それはとても嬉しい誤算のはずなのに、何故か全く嬉しくない。拍子抜けしたのもあるが、どこか寂しいような気持ちすら芽生えていた。

「…………あぁやって言いますけど、後で泣くんですよ、結局。」

ガサガサと公園の物陰から、場面を見ていた京子が出てきて宮園に言った。

「……俺に気を遣ったのか?」
「そんな訳ないですよ、光君みたいな最低な人に気なんて遣う訳が無いじゃないですか」

京子の遠慮のない物言いに、この時に限っては宮園もグサッときた。

「適当な暇潰しに使われてた事を分かって、だから最後、スッキリ別れるように見せて意地を張ったんじゃないですか?こっちもあんたを必要としてない、て感じで」
「……恨まれるかな、俺」
「さぁ。高校生の恋愛で、そんな深刻な事にならないんちゃうかとは思いますけど」

夕日が恐ろしいほどの速さで落ち、公園には闇が広がりつつあった。

「……俺、やっぱ最低かな。」
「最低です。今更微妙にウジウジし出した所も含めて。」

京子も宮園にふい、と背を向けて歩き始める。
少し距離を置いてから立ち止まり、振り返らずに宮園に尋ねた。

「……今日は何箱打ちます?」
「は?」
「シャトル打ちですよ。何の気兼ねもなく、これで練習できますよね?何箱打つんですか?」
「……やりながら決めるよ」

京子は黙って、学校への道を再び歩き出す。
宮園もその後を、トボトボと追って歩いた。
この日ばかりは、宮園も視線も下を向いていた。



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