第一章
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貴方がいなければ祖国もない
「うわ、またか」
「またこの人出て来たわ」
お父さんとお母さんがテレビにあの男が出て来た嫌そうな声をあげた。
「まだ生きてるのか」
「成人病の塊っていうのに」
「早く拉致被害者帰せよな」
「そうよ、何やってるのよ」
その太っていて吊り目でへんてこりんなパーマに眼鏡、しかもシルクのおかしなジャケットとシークレットブーツという格好だ。
その人を見てだ、両親は言うのだった。
「この顔見ると不愉快になるな」
「それだけでね」
「あんな国早く潰れればいいんだ」
「全くよ」
二人でこうも言っていた。
「独裁国家だからな」
「それもこの人だけが贅沢してね」
「こいつだけじゃないか、あの国で太ってるのは」
「皆痩せててね」
「核開発はするしな」
「麻薬は売るし偽札刷って」
僕もその話を聞いて実は頷く。
「手前はハーレム持ってな」
「喜び組ね」
「酒に女に宮殿にご馳走に」
「何処の漫画の権力者よ」
絵に描いた様な腐った独裁者だ。
「こいつの贅沢だけで国家予算の二割だぞ」
「馬鹿みたいに軍事費使ってね」
「国民餓えてるんだぞ」
「餓死者一杯出てるのよ」
「それで一人だけ太ってな」
「それだけでどういう奴かわかるわよ」
「僕もね」
ここでだ、僕も両親に言った。
「学校で先生にこの人のこと言われたよ」
「ああ、何てだ?」
「何て言われたの?」
「不細工だって」
そう言われたというのだ。
「しかも悪人だって」
「そうだよ、こんな悪い奴いないぞ」
「父親も酷い奴だったけれどね」
「こいつもとんてもなく悪い奴だからな」
「先生が言うことは正しいわ」
その通りだとだ、両親は僕にも話してきた。
「学校の先生にはとんでもないのが多いがな」
「この人の国好きな先生がね」
「しかしそう言うなんてな」
「いい先生みたいね」
「まあ怒ると怖いけれどね」
それでもだ、僕は親に担任の先生のことを話した。
「おかしなことは言わないね」
「そうだよ、こいつみたいになるなよ」
「絶対にね」
「とんでもなく悪い奴だからな」
「自分さえいいっていう独裁者だから」
また僕にこう言う両親だった。
「人は攫うし麻薬は売るし核開発はするしな」
「偽札だって刷るし」
「しかも自分に逆らう人は皆殺しにするんだぞ」
「その親兄弟までね」
「収容所っていう刑務所みたいなところに人をやってな」
「自分だけ美味しいもの食べて他の人を餓えさせているから」
「ううん、本当に酷い人なんだ」
僕は両親の話からこのことを再認識した。
「だから先生も言うんだね」
「ああ、こんな奴はいないさ」
「最低の人間よ」
「そうだよね、
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