第四章
[8]前話
「凄く明るいわよ」
「そうだな、今は楽しみがあるからな」
「忙しいしね」
「楽しい?それで忙しいの?」
「菊を観ているからな、毎日」
「それで菊達を買ったり世話をしたりして忙しいから」
だからだというのだ。
「やることも多くなったからな」
「そのせいだと思うわ」
「何かね、今のお父さんとお母さんの顔ってね」
どんな顔になっているかというのだ、その明るい顔は。
「私や兄さん、姉さん達がいた時みたいよ」
「御前達がいた時みたいか」
「そんな顔になってるのね」
「何かね」
そうした顔になっているというのだ。
「若返った感じよ」
「ははは、そうか」
「そんな風にもなってるのね」
「ええ、本当にいいことになってるわね」
こう話してだ、そしてだった。
彼女も菊を観てだ、こう言った。
「私も菊を観ていいかしら」
「ああ、好きなだけ観ろ」
「減るものじゃないからね」
「観ましょう」
末娘は自分の夫にも言った、そしてだった。
彼女も菊を観る、そのうえでだった。
彼女は菊のことを兄や姉達にも話した、するとだった。
彼等も自分達の家族を連れて菊を観に来た、時には菊や菊人形を持ってきたので家は余計に菊で飾られた。
さらに増えた菊達も観てだ、ご主人は奥さんに言った。
「子供や孫達が来る回数も増えたしな」
「菊もさらに増えてね」
「忙しくなる一方だ」
「ええ、それでもね」
どうなったかとだ、奥さんは自分と同じ笑顔になっているご主人に話した。
「とても楽しくなったわね」
「暇ではなくなった」
「菊だけでこんなに変わるなんて」
「思いも寄らなかったな」
「あの時お花屋さんで菊を観なかったら」
どうなっていたか、奥さんはふとこんなことを言った。
「私達今もね」
「何もすることがなくてな」
「困っていたわね」
「そうだな、もうな」
「それが変わったわね」
一変したと言っていい、まさに子供達が家にいた時と同じ様になった。
それでだ、奥さんはご主人にこんなことを言った。
「今の私達にとっては菊がね」
「子供か」
「ええ、そうなっているわね」
「そうだな、いつも世話をしているからな」
「それだったらね」
まさにだ、今は菊達がだというのだ。
「私達は今また子供達に囲まれているわ」
「そうなっているな」
「そうよ。今またね」
奥さんは穏やかな笑顔で話す、そしてだった。
二人は家の中にある菊達に囲まれ外に出ても彼等を観て楽しむのだった。二人の心に完全に楽しいものが戻った、菊達によって。
老夫婦の菊 完
2013・12・18
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