第三章
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家にいてもだった、自然と心が和みご主人は奥さんに目を細めさせて言った。
「いいものだな」
「ええ、本当に」
奥さんも目を細めさせてご主人に応える。二人の前には何輪かの菊がある。
「こうして観ているとそれだけで」
「心が和むな」
「たった数輪だけれど」
「しかしその数輪がな」
「とてもいいわね」
「本当にな。何もなかった家にな」
今は菊がある、そしてその菊達を観てだった。
二人は自然と笑顔になる、それで今度はご主人から話した。
「菊をもっと買うか」
「増やすのね」
「ああ、それにな」
「それに?」
「菊も世話が必要だな」
ご主人は奥さんにこのことも話すのだった。
「そうだな」
「そうね、お花だからね」
生きているのだ、花は植物であり植物も生きている。それでは世話をしなくてはならないのも当然である。
そしてだ、その世話がだというのだ。
「時間も潰せる、いいだろう」
「そうね。それじゃあね」
こうして家の菊が増やされた。家という家が菊で満たされた。それだけで二人は心が楽しんだ。しかもそれだけでなく。
菊達の世話もあった、それでだった。二人は家の中でも外でも菊を観て楽しんだ。
そこにある日二人の末娘、結婚はしたがまだ子供がいない彼女が自分の夫と共に顔を見せに来た。そのうえで家の中を見回してだった。
自分の両親にだ、どうしたという顔で尋ねたのだった。
「お父さんもお母さんも菊好きだったの?」
「前から嫌いじゃないな」
「そうだったのね」
二人はお互いに顔を見合わせてから娘に答えた。
「それもこの多さは」
「驚いたか?」
「そうなったかしら」
「何かって思ったわ。これじゃあまるでね」
何かとだ、娘は自分の夫と共に二人の前に座りつつ茶を飲みつつ話した。
「菊屋敷よ」
「ははは、菊屋敷か」
「そう言うのね」
「そんな感じよ。けれど二人共ね」
その両親の顔を見てだ、こうも言うのだった。
「前に来た時よりもずっと明るくなってるわ」
「そうか、そんなにか」
「変わってるのね」
「いい顔になってるわ。前来た時はぼーーっとしてる感じだったのに」
それが今ではというのだ。
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