第三章
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そして生きていることも感じながらだ、彼は自分の妻に話すのだった。
「けれど俺は生きた」
「それならよね」
「また起きてな」
「リハビリはじめるのね」
「それでもう一度マウンドに立ちたい」
絶対にだというのだ。
「投げたい、本当にな」
「投げたいのね」
「ああ」
そうだとだ、妻に答えた。
「何があってもな」
「そうね、折角生きていられるから」
「あいつがどう思ってるかわからないけれどな」
それでもだというのだ、盛田はその彼が幼い時に亡くなった弟、彼と同じ病気で死んでしまった彼のことも思いつつ言った。
「俺はまた投げる、絶対に」
「頑張りましょう、それでね」
「もう一度マウンドで」
投げると誓ってだ、彼は今はベッドの中にいた。もっともこう言えるまでにも、リハビリを決断するまでも苦労した、彼は死にたい右腕を切り落としたいとさえ思いリハビリにも躊躇したが何とか妻に説得されて向かったのである。
盛田はリハビリを開始した。しかしそれはあまりにも辛いものだった。
身体が思う様に動かない、身体の全てがだ。特に右半身はまるで自分の身体の様に動かなかった、痺れて。
脳腫瘍の後遺症だけではない、長くベッドにいたせいもあり。
身体が満足に動かない、動かそうとするだけで辛い。恐ろしいまでの体力を使う。
盛田はその状況にだ、リハビリを担当する医師に言った。
「これまで普通に動けたのに」
「今はですね」
「全く動かないです」
そのことにだ、驚きと苛立ちを感じて言うのだった。
「こんなに動かないものなんですか」
「焦ることはないです」
医師は全身汗だくになっている盛田に優しい笑顔でこう告げた。
「明日がありますし」
「明日ですか」
「また明日動かしていきましょう」
「そうしていけばですね」
「絶対に動ける様になります」
「そうですね、絶対にですね」
「なりますから」
だからだというのだ。
「明日もやりましょう」
「そうですね、絶対に」
リハビリの部屋の中でだ、盛田は部屋の中を見なかった。
マウンド、その場とそこから見るバッターボックスを見てだ、こう言うのだった。
「もう一度」
「マウンドにですね」
「絶対に立ちます」
こう言ってだった、盛田はリハビリを続けることを誓った。そうしてようやくだった。
手術か一年以上経ってだ、彼はマウンドに立てたのだった。
二軍のマウンドだ、しかしマウンドはマウンドである。そこで投げた後でだった。
二軍監督である梨田昌孝にだ、彼は笑顔でこう言った。
「やっと戻って来られました」
「よく戻って来たな」
梨田はその盛田に満面の笑顔で返してきた。
「皆待ってたぞ」
「本当に夢みたいです」
盛田は二軍であった為数少ない
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