第二章
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「そこは何とかします」
「ご自身で、ですか」
「はい、頑張ります」
脳腫瘍を取り除いてからもだ、復帰を決意した。
手術は九月に行われ十二時間もかけたが成功に終わった、だが戦いはこれからだった。
小林もだ、これ以上はないまでに苦しい顔で佐々木に言った。
「手術は成功しましたけど」
「それでもやな」
佐々木もだ、唇を噛み締めつつ小林に応える。
「また投げられるかどうかは」
「わかりません」
こう言うのだったピッチングコーチとして。
「投げられても右足に後遺症は残ります」
「まだ若いのにか」
佐々木は首を横に振ってこの言葉を出した。
「これからやっちゅうのにな」
「人間としてもですね」
「そうや、脳腫瘍なんてな」
「ですが盛田は何とか復帰するって言うてます」
「そうか、頑張るつもりやねんな」
「どうしますか?」
「見守るわ」
これが佐々木の決断だった。,
「そうするわ」
「戦力として考えますか」
「そんな簡単に戦力外に出来るか」
佐々木はその口を顰めさせつつ言った、尖らせずにそうしたのだ。
「確かにまずいけどな」
「それでもですか」
「そや、横浜ではよお投げてくれた」
あの大魔神佐々木主浩と共にダブルストッパーとさえ呼ばれていた。最優秀防御率のタイトルを獲得したこともある。実力は確かだ。
「しかも出血トレードまでして手に入れた」
「中根とですから」
当時の近鉄の主力選手の一人であった、左ピッチャーに強いだけでなく守備もいい外野のレギュラーの一人だった。その彼を放出してまで手に入れたのだ。
「そう簡単には」
「それ以上にそんなことになった奴を見捨てられるか」
人情もあった、最後に言ったがこれが第一だった。
「頑張る言うてるんやったらな」
「それをですね」
「見守る、わし等もバックアップしてな」
「その復帰を助けますか」
「あいつは戻って来るわ」
佐々木はこうも言った。
「わしはそれまで待つ、絶対にな」
「そやったらわしも」
小林も佐々木のその言葉に頷いた、そしてだった。
首脳陣は盛田の復帰を待つことにした、しかし。
盛田はベッドの中から暫く起き上がれなかった、リハビリもまだ先だった。
手術の後に見舞いに来た妻にだ、彼は言った。
「俺の弟のことだけれどな」
「確かあなたと一緒で」
「ああ、脳腫瘍になってな」
それでだというのだ。
「死んだんだよ」
「そうだったわよね」
「五つの時だったな」
盛田は遠い目になった、その目で妻の顔と病院の白い無機質な天井を同じ視界の中に入れながら話すのだった。
「俺がな」
「弟さんはまだ小さかったのに」
「脳腫瘍ってのはな。そうなる病気じゃないけれど」
「なればね」
「死んだよ、あ
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